ねむろう

NOCEBO/ノセボのねむろうのネタバレレビュー・内容・結末

NOCEBO/ノセボ(2022年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

2023新作_255


治癒が開く"扉"――


【簡単なあらすじ】
ファッションデザイナーとして名を馳せるクリスティーンは、夫のフェリックスと幼い娘のボブスとダブリン郊外で悠々自適に暮らしていた。ある日、仕事中にクリスティーンはダニに寄生された犬の幻影に襲われる。8 ヶ月後、クリスティーンは筋肉の痙攣、記憶喪失や幻覚などを引き起こす原因不明の体調不良に悩まされていた。そんな彼女の前に、ダイアナと名乗るフィリピン人の乳母が現れる。彼女は雇った覚えのない乳母を最初は怪しむが、ダイアナは伝統的な民間療法を用いてクリスティーンの治療にあたり彼女の信頼を得ていく。やがてクリスティーンは民間療法にのめり込んでゆくが、それは一家を襲う想像を絶する悪夢の始まりだった――



【ここがいいね!】
『ビバリウム』(2021)のロルカン・フィネガン監督の新作ということで、期待をして見に行きましたが、『ビバリウム』とまた違った方向性を持ちながらも、テーマとしては似通ったところがあったのかなと思います。
最終的には、ダイアナというフィリピン系の女性がクリスティーン家を乗っ取り、破壊していくという作品だったわけです。
『ビバリウム』では、超現実的な鍵かっこ付きの『絵に描いたような家」を舞台に超常現象的な出来事が起こり、最終的にはこれまた家庭が破壊される話だったわけですが、そこに今回は、東南アジア的なシャーマニズムが加わり、さらに、ファッション業界の闇も織り込まれていました。
前回は非常に「世にも奇妙な物語」的な話ではありましたが、そこにプラスアルファで、社会批評的な話も入ってきていたと思います。
作品としては、ダイアナがクリスティーンの家に入って、クリスティーンを治療しようとする「現在」のパートと、ダイアナの「過去」が入れ関わりで進行し、最終的になぜダイアナがこのクリスティーンの家に来たのかというところが明らかになります。
その編集の仕方が、最後の30分に全てを爆発させるような形になっていたのは、教科書的と言ったら陳腐になりますが、非常にわかりやすい作品になっていたのかなと感じます。



【ここがう~ん……(私の勉強不足)】
もちろん、自分の娘を「システム」の中で起こった事故とはいえ、奪われた者の復讐劇という形で言い表すことはできますが、ダイアナが元々シャーマンとしての能力を受け継いで、それを今度はクリスティーンの子どもに最終的には受け継いだ、というところで話は終わるわけです。
そうなると、なぜダイアナはボブスに力を渡したのかなというところは疑問に思いました。
そもそも、クリスティーンのトラウマとダイアナのシャーマン的な力、そしてダイアナの過去が合致したことによって、今回の一連のお話があるわけですが、それは最終的には完結してしまったわけですので、ではあの力は今後どうなっていくのかというところは少し考えたいと思います。



【ざっくり感想】
最終的には、因果応報的な話にまとまっていきましたが、病院から帰ってきた旦那さんと力を受け渡されたボブスが、今後どのように生きていくのかというところが非常に気になる終わり方をしていました。
そして、そこでスパッと切るのも、『ビバリウム』では終わりがないものであるというところで終わらせたのとは逆で、どうなるかわからないという終わり方にするのも、これまた面白いところではありました。
『ビバリウム』では、「カッコウの托卵」で、もともといた鳥の子どもが巣から追い出されて死んでいるところからスタートしましたが、今回も生まれたばかりの鳥がシャーマンの能力として受け継がれていくというモチーフも共通していて、『ビバリウム』を観ていた側としては、面白い作品になっていたのかなと思います。
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