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フリーダム・オン・ファイヤーのmingoのレビュー・感想・評価

4.0
「クラスター弾だ!」
ゲームの中でしか聞かないような台詞が普通に生活している市民の口から発せられ、今年の2月24日に開始されたロシア軍の侵攻を受けたウクライナの首都キーウやマリウポリなど古今東西のさまざまな都市の一般市民へのインタビューから「戦争」が人々に何をもたらしたかを描く全世界必見のドキュメンタリー。

マスコミで働き来年で10年になるが今年はウクライナのありとあらゆる地図を職場の中で誰よりも多く描いたからこそ、2014年のマイダン革命から続くこの戦争の重みや実感を自分の眼で感じたく急遽決まったプログラムへ足を運ぶ。
正直全インタビューが聴き逃せないくらいの魂のこもった言葉ばかりでミサイルが飛び交い火が立ち上る街中で老婆が「ファシストがぁ!」と呟く画面というのはどう考えても現実の世界とは思えない。

ヴラセンコ一家の姉が弟を守るが姉の肺が貫かれたことにより小さい弟がロシア軍に今現在幼いながらも「持ち合わせの言葉」で立ち向かい、7歳のマカルは落ち着いた面持ちでカメラを手に取り、クリミアの中継地である南東部マリウポリのアゾフスタリ製鉄所の地下生活の中での子供たちの希望の眼差しは忘れることが出来ないし、シリアのアレッポで実際に使われた分断のメカニズムを用いた作戦を小さな街の産院で行う理由はいくら探してもみつからない。

爆撃→砲撃→自動小銃の無限地獄、東部の激戦地ドンバス(ドネツク・ルハンスク)地方の分離主義者たち(TIFF2022「クロンダイク」でもモチーフになっていた)、ウクライナ第2の都市ハルキウを守る人々(占領からは守ったが最終的には分離主義者が支配する東部地域へと戦略的に重要な町イジュームを奪われることになる)、そしてソ連時代の支持者層である親ロの老害たち、さらにはミコライウやオデッサなどの南部と北部のチェルニヒウなどウクライナ軍の土地を3方向から責め立てるプーチン…
映画は主に5月末までのインタビューで構成されているためザポロジエ原発包囲などのニュースは描かれていないが未だに「戦争は続いている」ということを受け止めて欲しいというウクライナ大使館だったか市川ディレクターの言葉が頭の片隅にずっとある。。。
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