ゆうすけ

Single8のゆうすけのレビュー・感想・評価

Single8(2023年製作の映画)
5.0
心地よく痺れたのは、初めてかもしれない。
じゃまた明日ね!と言ったのに、誰も帰ろうとしない、コンビニの光が照らす車止めに座っている感覚。
しかもそこはデイリーヤマザキなはずだ。もっと言えば今無きセーブオンだろうか。
時間は何時でもいい。自転車の停め方は不形(ぶなり)でもいい。でも、タバコは吸わない。駐車の邪魔もしない。
背伸びしたくなる世の中でも、この場所はつま先立ちを許されないルールがあるみたい。いや、ルールはなかったかもしれない。無くても誰もする必要がないくらい、影の背丈が同じである。

スターウォーズを愛してやまない自分にとって、当時を生きていない、8mmも知らない自分にとって、この作品との距離感は、興味本位でしかなかった。スターウォーズというワードのみで開いた新文芸坐のドアは、どの出会い系サイトでも、どれだけ課金をしても、巡り合えいないくらい、素敵な作品を届けてくれた。スワイプもいいねもしたくない。トイレに行きたくなるまで、画面に映し出されたように、この空間が続けばよいと思った。
専門知識もなく、映画を作る興味もない中で、キャストの生み出す間と空気感が自然と笑顔を導き、グッと心を締め付ける回数が素敵なテンポとなり、知らないジャンルの音楽を聴いているように、目を離すことができなかった。
特に進むに連れて生み出されるヒロインの言葉選びと3人のどこにでもある会話の行き来には、群を抜いて決まりの無い主旋律が垣間見えた。

この作品と自分が生きた時代が違う為に、この作品から、あの頃に戻りたいとは思わない青春があったのは事実。でもそれは、生きた時代の差異ではなく、今置かれたこの世の中に、自分の好きや思いを表現する場所がたくさんあるからということかもしれない。
作品内の文化祭が、自分の生きる時代には毎日のように開催されている。
自分がこのクラスの一員だとしたら、明日の文化祭はなにを催すだろうか。誰にヒロインをしてもらおうか。
考えるだけでわくわくする。
生きている心地の物差しとは、毎日の文化祭で、8mmに何を映し、何を宿し、誰に届け、何を受け取るか、自分でもわからないことなのかもしれない。
むしろ、自分はわからない毎日を迎えたい。今日突然にこの作品に出会ったように―。
ゆうすけ

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