Godfather

Single8のGodfatherのレビュー・感想・評価

Single8(2023年製作の映画)
5.0
「ロードムービーに外れなし」という法則があるが、「映画を作る映画に外れなし」も今のところ例外はない。
あの『サマーフィルムに乗って』を凌ぐほどいい映画だとのレビューを見かけて早速観てみたのだが、これは期待の遥か上を行く傑作だ!2回続けて観てしまった。

映画を作る映画と言えば上野樹里主演の『虹の女神』も名作だったが、あっちはもうフィルムが相当レトロな物になっていた2000年代が舞台だった。もう8mmといえば誰もがビデオの方を連想した時代だし、デジタルビデオも普及し始めてた頃だ。

が、この映画は8mmフィルムがまだ市民の間でバリバリ使われていた1978年が舞台で、主人公は『スター・ウォーズ』に衝撃を受けて8mm映画を撮り始めた高校生たちなのだ。設定からして最高すぎるじゃないか!

登場人物がみな魅力的なのがまずいい。SFとか興味ないって言ってた先生も何気にいいアドバイスをしてくれるし、カメラ屋でバイトしてる大学生のうんちくもタメになる(あんな裏技で逆再生が撮れるのか... てっきりその後大失敗ってオチかと思ったw)

文化祭で映画作りやるのに反対してたシニカルな吉田が、思わぬタイミングで参戦してきてしまいには率先して映画の宣伝やるとこなんかスター・ウォーズで最後に助けにきたハン・ソロっぽくていい。

そして何よりヒロインの山口と栗田たち3人の男子がいい。キャスティングが完璧だよね。知的(?)なようで微妙にぎこちない会話もいかにもリアルな文化系男子学生って感じでいい。
創作の面白さに目覚めていく過程と甘酸っぱい青春ドラマが自然に絡んでるのもこの4人が上手いのが大きい。

彼らが8mm映画を作るプロセスの1つ1つは今見ると冗談みたいに思えるかもしれないけど(フィルムのコマに直接傷で絵を描いたり)、金のかけ方が違うだけで、CGが登場する前は商用の特撮映画だってあんな作り方してたのだ。『スター・ウォーズ』のスピーダーだってフィルムにワセリンを塗って車輪を消してたんだぜ。

出来上がった8mm作品を端折らずに全編流してくれたのもよかった。
先生が栗田たちにアドバイスしたように、実は栗田たちも映画の中で成長してるってのが上手いな。
前向きに駆け出すラストも爽やかでいい。これこそ青春だ。
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