キャッチ30

最悪な子どもたちのキャッチ30のレビュー・感想・評価

最悪な子どもたち(2022年製作の映画)
3.8
 過酷な状況下で生きてきた子供たちを映し出した映画は多い。『誰も知らない』や『存在のない子供たち』がその例だ。『最悪な子供たち』はさらに深刻だ。

 映画監督のガブリエルはフランス北部の治安が悪い地域を舞台にした映画を撮ることを企画する。地元の少年少女を集めた公開オーディションを行い、リリ、ライアン、ジェシー、マイリスの4人が選ばれた。

 4人はそれぞれ問題を抱えている。リリは異性との噂が絶えない。ライアンは怒りを制御することができない。ジェシーは出所したばかりで同性愛者を嫌悪する。マイリスは同性愛者で内気だ。撮影は思うように進まず、ガブリエルは苛立つが映画を撮る為に彼等とコミュニケーションを取ろうと苦心する。
 
 やがて映画はリリとライアンの二人に焦点が絞られてくる。見えてくるのはそれぞれの葛藤だ。リリは最愛の弟の死をいまだに引きずっている。ライアンは姉と暮らしているが、父親に捨てられ精神を病んだ母親と再び暮らすかどうか思い悩む。

 監督のリーズ・アコカとロマーヌ・ゲレは不安定な年頃の少年少女達の姿を映し出す。問題行動を起こしている者たちでも、カメラの前に立つと思わぬ才能を発揮する可能性もあると教えてくれる。鳩が大量に飛び交ったり姉と弟が感情を剥き出しにする場面はこの映画の白眉だと思った。