脳内金魚

最悪な子どもたちの脳内金魚のレビュー・感想・評価

最悪な子どもたち(2022年製作の映画)
-
数年前話題になった、演出ではなく実際に子役を殴っていたと話題になった邦画を思い出した。(調べたら小林勇貴監督『ヘドローバ』と言う作品だった)

あくまで劇中の設定はフィクションであるのだが、作中で監督が出演者のひとりのライアン役の子につめより、彼がひきつけ(てんかんか?)を起こすシーンがある。それを見て、上記のことを思い出した次第だ。出演者はまったくの演技の素人との前情報と、「映画制作のモラルを問う真摯な作品」との評価を鑑みると、あれが演出なのかがとても気になるところだ。
そして、リリとジェシーのベッドシーンの撮影シーンがある。演者の実体験はともかくとして、未成年の子達がラブシーンを演じさせられることと、監督の作品性の追求から要求がエスカレートする描写に、なるほど、これが「映画制作のモラルを問う真摯な作品」かと思った。
この作品のパンフレットで『インティマシーコーディネイター』と言う存在をしったのだが、この映画の製作国であるフランスでは(この作品を製作した時点では)まだ未導入だそうだ。

映画と言うのはいかに「虚構を現実のように見せるか」だ。いかに「本物を撮るか」ではない。例えばアクションシーンを撮るのに命を賭けたり、殺人シーンで人を本当に殺すことも、宇宙のシーンを撮るのに宇宙に行く必要はない。(もっとも宇宙に関しては今後は分からないが)だからこその撮影技術の革新や向上であり、CGIの使用が必ずしも悪いわけではない。そんな中、おそらく性描写や負の感情(恐怖や悲しみなど)を撮影することに関しては、「リアル」を追求することに何ら疑問が抱かれなかった分野なのだろう。それは、トラウマの軽視や女性の立場の弱さなどもあったのかなと思った。

ひきつけやベッドシーンなどのこともあり、全面的にわたしはこの映画を見てポジティブな気持ちにはなりきれなかったが、エンタメ分野における人権保護と言う面を知るということでは興味深かった。
脳内金魚

脳内金魚