あさのひかり

⻘いカフタンの仕立て屋のあさのひかりのレビュー・感想・評価

⻘いカフタンの仕立て屋(2022年製作の映画)
4.3
この監督の前作「モロッコ、彼女たちの朝」が好きだったのと、カフタンがどんなものなのか見てみたかったので鑑賞。今作もまたとても好きな作品。

前作も今作も、登場人物たちがちゃんと人として芯がある魅力的な人達だし、そんな彼らが傷つき揺らぎながらも、ちゃんと自分の生き方を貫いていて。

そんな風にそれぞれに魅力的な、仕立て屋その妻、新たな店の従業員となった3者の間にあるものはひりひりした緊張感もあったけど、その中に彼らにしか分かり得ない繊細な深い愛情がそこにはあって。愛の形は本人たちが良ければ百人百様で良いと思う私には、この愛は偽りのないとても美しいものに感じた。

もちろん、職人さんの手で一針一針丁寧に仕立てられ刺繍されていく、表題の青いカフタンそれ自体がとても繊細でとても美しくて。それだけでもスクリーンで見て良かった。

画面の表現としては、細かい刺繍が美しいカフタンの深い青、明るくて自由な奥さんの象徴みたいなみかんの色、あるいは登場人物たちの背中を中心とした肌の質感。それらが雄弁に物語を語るのも、この映画にふさわしい美しさに感じられた。
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