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⻘いカフタンの仕立て屋のsymaxのレビュー・感想・評価

⻘いカフタンの仕立て屋(2022年製作の映画)
3.6
"…あなたは誰よりも純粋な人…あなたの妻で良かった…"

極上のカフタンを作るハリム…職人気質で接客には向かないハリムに代わり、接客対応を一手に引き受けるハシムの妻ミナ。

手仕事にこだわり、ミシンを使わないハリムの仕事ぶりは確かなものでしたが、客の注文は溜まっていく一方…見習いとして雇ったユーセフは、中々筋が良く、しかもハンサム…

…ミナは気づいてしまった…夫ハリムがユーセフを見つめる目…息遣い…仕草…

思いがけず自らの心に芽生える気持ちに焦りを感じてしまう…そう、それは"嫉妬"…だがミナに残された時間は…

結局、見逃してしまった"モロッコ、彼女たちの朝"…マリヤム・トゥザニ監督の最新作は、とても深い愛についてのお話…

社会的にも宗教的にも同性愛がタブーである世界で、本心を抑え込んできた夫ハリムとそれを薄々感じながらも、単なる夫婦愛以上の愛情で全てを包み込む妻ミナ…

…見ない夫、そして見ない振りをする妻…

ミナに残された時間が少ない事を知って初めてお互いを理解し合うようにも感じ、ある意味切ないのです。

痩せて痛々しいミナの背中と若々しく生き生きとしたユーセフの背中はどちらもハリムにとっては大切で美しい存在なのかもしれません。

とても印象深かったのは、"目の演技"…説明的なセリフが少ないにも関わらず、ミナ・ハリム・ユーセフ、それぞれの"目"が登場人物の抑えても溢れ出す気持ちを痛い程感じるのです。

伝統的な衣装を作る職人が、厳格で閉鎖的な宗教的価値観でがんじがらめの社会に一石を投じる…

鮮やかな青色のカフタンにハリムのその後の人生への覚悟が見え、何だか清々しい気持ちになったのでした…
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