Neki

⻘いカフタンの仕立て屋のNekiのレビュー・感想・評価

⻘いカフタンの仕立て屋(2022年製作の映画)
3.3
モロッコ〜🇲🇦この監督の作品は初鑑賞。とりあえず近いうちに前作も見たい。


仕立て屋を営むモロッコのとある地域の夫婦。画面に映る建物や道の寂れた中東の田舎感がなんだか心地よく、ほんのりバックパッカーのような放浪者になった気分。
だけどやはり寂れてて、少し物悲しくて寂しい気持ちになるところがいい。でもちょっと長かったなあ。


他のフランス映画などにも時々思うことだけど、息が詰まるくらい登場人物の顔に寄せたショットが多い。言葉のなさを埋める皮膚の質感やシワ、息づかい。途中から全身が映るようになった。

艶かしい手つきで美しい青の生地を手繰る出だしはとても官能的。


夫婦の仕立て屋に弟子として若い男性がやってくるあたりから始まるとても静かな物語中やはり描かれるのはイスラム教の戒律の中と外で、奥さんのミナはずっと中のひと。


カフタンに縫い上げられる刺繍のように、たくさんの戒律によって本当に長い時間をかけて織り上げられたイスラム世界の中で隠れながら存在する同性愛者と、その奥さん。

奥さんがまた気が強くて、女性らしい強さに溢れたひとだった。


ミナ、ハリム、ユーセフの3人それぞれが互いに向け合う様々な種類の愛が描かれるけど、同性愛者同士の愛だけじゃなくて、夫婦の間に積み上げられてきた愛を最後まで描いていたところがまたなんとも。

最後にぽつんとカフェに座ってるハリムとユーセフの姿が、これまたなんとも。
そのカフェは本当に、イスラム圏における男性社会の象徴そのものっぽかったので。


厳しい戒律に守られたイスラム社会だからこそ繊細で鮮烈な印象を与えられる映画だったのかなあ。多分。


ただやっぱり少し長いし、登場人物が語らなさすぎる。静かな映画好きだけど彼らの感情や考えがあまりに目隠しされたままで、ちょっとわかりにくかったなあ。

その代わりとして用意された視線、仕草、間合いは逆にあからさまに語りすぎる。もうちょっと繊細でも全然伝わるはずだし、語らないからこその余白もう少し欲しかったなあ〜。やっぱり許されざる視線とか旅立ちとかって窓使って表現するよね。終始窓とかドアとかだった。


とにかくその言葉以外の多用のせいか、イスラム社会の中に介在する意識的あるいは無意識的文化に疎いので、戒律から逸脱することの重みがちょっっっとよく分からない感否めなかった。

そんなことして大丈夫なの?破滅なの?んんん?よくわからないけどカフタンめっちゃ綺麗。

そんな感じのラストでした。
カフタンや刺繍が本当に美しく、人が手で作り出すものの美しさを改めて感じられた映画でした。
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