mity

⻘いカフタンの仕立て屋のmityのレビュー・感想・評価

⻘いカフタンの仕立て屋(2022年製作の映画)
4.0
骨が浮かび上がり、布が余っていく身体を前に何も出来ないでいるのは、どれ程苦しいだろう。着実に死が迫るなか、それでも気丈に愛情深く居続けたミナに応えるように、ミナを送り出すハリムとユーセフ。そのラストにグッときた。

ハリムの腕を誇りに思い、接客としてハリムの手仕事を守ってきたミナ。そこに助手としてやってきたユーセフ。分かりやすいミナの嫉妬に、揺らぐ関係性···でも、ミナのハリムに対する愛情は揺らがないし、ユーセフをもまるっと愛するその強さを、ミナは持っていたなと思った。

ユーセフが現れたことでハリムに甘え始めたミナが、ハリムに髪を洗ってもらうシーン、好きだったな。25年前から洗って欲しかったと笑うミナの表情は慈愛に満ちていて、幸福を画にしたようだった。
『あちらにいる鬼』でも印象的だったけれど、大切な人の髪を洗うという行為に、私は特別さを感じているんだろうなと思う。

江國香織さんの『きらきらひかる』を、久しぶりに読んでみようかと思った。あの頃分からなかった事も、この映画を観た今なら、想像出来るかもしれない。


#54_2023
mity

mity