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薔薇の名前のmidoredのレビュー・感想・評価

薔薇の名前(1986年製作の映画)
2.5
修道院で起きる連続殺人の謎を解くミステリー。ショーン・コネリーが明智小五郎ならば、若きクリスチャン・スレーターは小林少年といった役所でした。

ミステリーはともかく、師弟コンビどちらも最初から最後まで世俗的なのはどういった意図なのでしょうか。所作もセリフも、とても信仰の人には見えませんでした。

ちょっと前に、とても硬派な男子修道院のドキュメンタリー『大いなる沈黙へ グランド・シャルトルーズ修道院』を見たというのもあって、そこばかり気になってしまいました。あまりにも違うのです。

どこの宗派かは忘れましたが、来日中の修道士たちを見たこともあります。師弟と思しき集団が静かに話しながら歩いているだけでも、一歩一歩がどこか念のこもったような、浮世離れした独特の雰囲気をかもしだしており、世俗の最中にあっても修道院の中にいるような徹底ぶりに、いたく感心したのを覚えています。

彼らと比べるとセカセカした快活なウィリアム修道士は修道士コスプレのコネリーにしか見えないのです。フードの下に高級時計を隠していそうなのです。修道士にゴージャスなコネリーは完全にミスキャストではなかろうかと思います。

弟子は弟子で出家した身で性交するのですから心底呆れました。ラストの甘いシーンふくめて、アメリカで青春を謳歌している高校生でしかありません。修道士をコケにしすぎです。

そんな「コスプレ修道士」な主演2人のみならず、キリスト教関係者がことごとく低俗かつ悪魔っぽく描かれているのも、どうしても気になってしまいました。ビジュアルふくめてまるきり魑魅魍魎の群でした。貴重な書物が燃えてしまうのも心が痛みました。キリスト教徒ではなくとも、キリスト教のネガキャンを疑うレベルです。

もちろん歴史の教科書にあるように、彼らの多くは地域社会において腐り切った権力者だったのかもしれません。そこは門外漢なので何ともいえません。地面に転がった拷問器具やあり得ない方向に曲がった手なんかはいかにもありそうではありました。

それにしても薔薇の名前が何なのかもさっぱり興味がわきませんでしたし、作品が有名すぎてトリックのネタも事前に知っていたしで、自分の場面、あまり楽しい鑑賞にならなかったのだけは確かです。
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