アキヒロ

薔薇の名前のアキヒロのレビュー・感想・評価

薔薇の名前(1986年製作の映画)
4.3
すばらしい映像化。
イタリア発の宗教本格ミステリで、ウンベルト・エーコの原作も読みましたが映画は雰囲気が掴みやすくていいです。

"笑い"さえ禁じる厳しい戒律を重んじるカトリック修道院ベネディクト会の元にやってきたウィリアムとその弟子アドソ。
そこではすでに若僧アデルモの不審死が起きており、アリストテレスが推しであるロジカル・モンスター"バスカヴィルのウィリアム"がホームズよろしく調査を始める、というもの。

手始めにウィリアムは、状況だけを判断し、初めて訪れた修道院の間取りを当てたりと、まさに探偵役としての敏腕ぶりを発揮。
いぶし銀のショーン・コネリーがいい味を出しています。

第一の死:アデルモ(墜落死)
第二の死:ヴェナンツィオ(豚小屋で逆さ立ち死)※ポーズが犬神家※実は中毒死後にベレンガーリオが死体を移動させる
第三の死:ベレンガーリオ(浴槽で水死)※実は中毒死
第四の死:セヴェリーノ(六分儀の先で刺殺)
第五の死:マラキア(「第五のラッパ」と言い中毒死)
という死は黙示録の見立てにもなっており、古色蒼然とした映像にもバラのごとき彩りを添えます。

中盤でウィリアムの推理が披露されますが、肝心の図書室をベネディクト会側から見せてもらえず頓挫。
そんな中、昔ウィリアムとバトった異端審問官のベルナール・ギーが招致されるということでフランチェスコ会の修道士たちはザワつく。

ギーの異端審問により、無実の僧が処刑されようとしたとき、ウィリアムはこの判決ではまだ殺人は続くと警告するが無視されてしまう。
結局、第五の死が起きてしまう。

ウィリアムは暗号を解読し、図書館の迷宮の中の抜け道を見つけると、その中には盲目の老僧ホルヘが。
そのホルヘは「よくぞここを見つけた、褒美に禁書扱いとなっていた喜劇論に関する書物をお前に読ませてやる」と言って、一冊の本をよこす。
ウィリアムはそれを手袋をし読み進めるとホルヘは「もっと読め、もっと読め、弟子にも読んでもらえ」と言うが、ウィリアムはそれを静止する。
ホルヘは書物のページに毒を塗り、ページをめくるときに指を舐めることで、禁書を読んだ者たちを殺していた……
(だから死体の指と舌はインクで黒ずんでいた)

ホルヘは喜劇論の書物を読み、笑うことを許容することを知った者の信仰が薄れたりねじ曲げられることを危惧して、禁書を読もうとした者を殺していたのだった。
火に包まれるホルヘと図書館が美しい。
最後、修道院から逃げたベルナールが崖から転落して串刺しになるのもざまあだった。
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