モカ

薔薇の名前のモカのレビュー・感想・評価

薔薇の名前(1986年製作の映画)
5.0
毎年寒い季節になると観たくなる一本。
自分の中では思い入れの強い作品なので、評価が激甘になってます。

物語としては、14世紀北イタリアの修道院で起きた不可解な連続殺人に関する推理モノ。
自分は修道院や信仰とは無縁ですが、内容うんぬんと言うより、中世の雰囲気味わいたさに何度も観てしまう。この映画はもうとにかく雰囲気が出過ぎてて最高です。

中世暗黒時代の不穏な色が強く残る修道院を見事なセットで表現していて、登場人物も個性的と言うか、非常に強烈な人物ばかり(個人的にはサルヴァトーレがお気に入り)。それがこの物語に面白みと重厚な陰鬱感を加えています。
インターネット社会とは違って、書物が知識の源泉として描かれている点も本好きにはたまらない。

原作も読みましたが、原作の方が宗教色が映画以上に濃くて、そこに『聖書』『神曲』『デカメロン』『バスカヴィル家の犬』などからの隠喩が仄めかされている難解──と言うかカトリック関係の話が大部分を占めていて読みづらい──な小説でした。

この映画は原作に忠実ではありませんし、随分と端折られた構成です。ただ、ダークな雰囲気なら映画の方が上かと。
原作のような小難しさもなく、よくここまで中世のドロドロとした世界観を引き出せたものだと驚かされる。
中世のファンタジーではない、暗く重厚な世界観を求める方にこそ勧ていただきたい。
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