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カンフースタントマン 龍虎武師のnamのレビュー・感想・評価

3.9
「栄枯盛衰!スタントマン目線で語られる香港カンフー映画の黄金時代の裏側」

ドストライク世代は自分より一回り上の40代の方々かとは思うものの、自分も幼少期はテレビやレンタルでジャッキー映画に慣れ親しみ、学校ではカンフー好きの友人とマネしたりという経験があり好きだったので楽しみにしていた作品。

ドキュメンタリーの構成としては当時から現場の第一線で活躍していた伝説的なスタントマン達のインタビューメインの構成で、当時の映像など挟み込みながら香港カンフー映画の歴史を知れる作品。

京劇を起源とし、その衰退とともに映画界に流れブルース・リーの活躍、ジャッキー・チェンやサモ・ハン・キンポーなどのコミカルアクションの台頭、そして80年代は4つの大きにスタントマンチーム(ジャッキー、サモハン、ユエン・ウーピン、ラウ・カーリョン)に分かれて切磋琢磨し、より刺激の強いスタントを求めていった経緯が理解できた。

そんな中でCGもない時代にどうやって撮ったんだろうと思える映像はシンプルに「実際にやったまま撮っている」という衝撃! ビルの6階、7階から身を投げ出す、下にはダンボールを敷くだけ、断れば明日からの仕事がなくなるという常軌を逸したエピソードの数々には決して美談だけで終わらせてはいけない狂気がありましたが

同時にケガや死のリスクや将来への不安、そして香港映画の衰退に伴う現在など負の面も語ってくれたのはよかった。

ただそんな身体をはっていた特にメインとなるブルースやジャッキーだけでない、受け手、やられ役となるスタントマンの活躍あってこそ心を振るわせるアクション映画が作られた事も事実なので彼らは偉大だと感じました。

そしてただの香港映画界のみの話ではなく、ユエン・ウーピンのチームはハリウッドで「マトリックス」などの武術指導を行い、その完成されたチーム体制の影響からチャド・スタエルスキやデビット・リーチが立ち上げた「87イレブン」という「ジョン・ウィック」シリーズや「デッドプール」などハリウッドの最先端のアクションチームが生まれている。

片や日本では本作のパンフレットでもスタントマンの系譜図が載っていましたが、ユエン・ウーピン一派のドニー・チェンチームにてアクションを学んだ谷垣健治「るろうに剣心」、下村勇二「キングダム」、大内貴仁「HiGH&LOW」シリーズなど現代の日本のアクションの礎にもなっていると考えると世界のアクション映画に影響を与えたと言って過言ではないようです。

この作品をきっかけによりこのジャンルの作品をより観たくなりましたし、また受け側であるスタントの方々にも注目して今後観る視点が増えました。

ドキュメンタリーとしてはややシンプルなので映画館で観た方がよいかは悩ましいですがカンフー映画好きは必見かと。
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