おどろきの白鳥

カンフースタントマン 龍虎武師のおどろきの白鳥のレビュー・感想・評価

4.2
面白かった!
と同時に、痛かった。

世代が限られ、趣味性が強いので、客を選ぶとは思いますが。
1980年代のカンフーアクションに魅了され、今『ジョン・ウィック』実写『るろうに剣心』(のアクション)を面白いと思う人たちには超おすすめ。
自分には青春時代の記憶を直接刺激してくれる快作でした。
たぶん、ブルース・リー、ジャッキー・チェン、ドニー・イェンくらいしか知らない人には、多くの登場した老師たちの、若き姿やインタビューの貴重さは理解できないだろう。
サモ・ハンやツイ・ハークのコメントがすばらしい!(一部ひどいけど)

そして、観てる最中、ずっと「いてて、痛いよ」「あうっ!Ouchi」って声が漏れちゃった。
あの映画のあのアクションも、下に何のクッションなしだったたの?
マジでそのまま救急車で運ばれたの?
みたいな証言と、そのシーン再生という繰り返し。

出てくる武術師範たちって要は、「たまたま運良く命があった人たち」でしょ?
この一人が生き残った陰で、何人死んだり、半身不随で寝たきりになったり、障害を抱えたりしたんだろうと考えたら、背中を寒いものが。

そして、切なかった。
昨年観た『クリーチャー・デザイナーズ ハリウッド特殊効果の魔術師たち』同様に、かつて関わった人たちが「資本が中国本土に移って」「CGとワイヤーワーク中心でハリウッドにアクションの本場が移った」などの理由で、仕事がなくなり、後継者も育たないなどの苦境に立たされていく姿はつらく。
隆盛を誇った「ショウ・ブラザース」「ゴールデン・ハーベスト(嘉禾電影有限公司)」などの制作・配給会社も今はなく。
落日の後の現代、若手育成に邁進するチン・カーロッの姿を追って幕。
いやはやいやはや。
観終わった瞬間、重たい感情の籠った拍手をいたしましたよ。