KnightsofOdessa

イヴの総てのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

イヴの総て(1950年製作の映画)
3.5
[] 70点

名誉ある賞の授賞式で、万雷の拍手の中で立ち上がるイヴは、虫も殺せなさそうな可愛らしい人物だが、実際はどんな人物なのか…を回想形式で解き明かしていく作品。回想当初のイヴは、大女優マーゴの大ファンとして毎日出待ちをしている純朴そうな田舎娘として登場するが、初めて楽屋に通されたのに全員知った顔のように振る舞っていて、すでにヤバさの片鱗を見せている。その後、ちょうどいい有能さからマーゴの世話役となったが、マーゴを立てながら"マーゴを立ててる自分"を演出していき、フット・イン・ザ・ドアの実施例といった感じで、じわじわと支配域を広げていこうとする。本作品の不思議な点は、他人を利用してのし上がろうとするのに、それに押されて破滅する人が誰もおらず、作品の前後で人物の立ち位置がほぼ変わっていないことだろう。おかげでアン・バクスター怖えとはなるが、後味はそれほど悪くないし、なんなら本性を暴かれて気の毒にすら感じてしまうほど。

ちなみに、同年のアカデミー賞の主演女優部門と助演女優部門に二人ずつノミネートされたのだが、どうもアン・バクスターは所属会社フォックスの力添えで前者にねじ込まれたらしく、結果的に票が割れてしまい、二人共受賞を逃した。まるで本編をなぞるような現実だ。というか、全然出てこないマリリン・モンローをジャケ写にするって、資本主義極まれりって感じで怖いわ。
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