丽遥

イヴの総ての丽遥のレビュー・感想・評価

イヴの総て(1950年製作の映画)
3.7
悪女と処女の反転が面白い。淡島千景的ポジションの女友達もGood
特にバースデーパーティでベティディヴィスとよく似たドレスを何食わぬ顔で着ていたイヴのグロさは異常。初めは観客によくある同一化現象なのかなと思ってたけど、ベティを乗っ取りたいからだと分かってからはその強かさにビビる。

ラストもイヴによく似た女子高生を用意しててなかなかのシビアさ。鏡に映ったトロフィーを抱える女子高生の図は、イヴの代わりとなる若い女優など今後山ほどやってくるという示唆だろう。イヴの総ての構造のもうひとつ恐ろしいところは、ラストの女子高生にトロフィーを持たせているところだと思う。この女優の代替わりシステムを取り込む権威の存在、演出家たちの存在があるということだ。彼女たちは権威による承認なくして成功を掴むことは出来ない。ちょうど端役のマリリン・モンローが演出家に権威に挨拶してきなさいと言われたように。

計算高いイヴだけど、ファム・ファタールでは無いところが特徴的かなと。彼女はベティの彼氏を手玉に取ろうとするけど失敗してるし、性的なシーンは作中に一切ない。むしろベティが翻弄されただけって感じだ。イヴの策略は終盤で明かされるけど、策略を明かそうと躍起になる主人公たちという感じでもない。物語の流れとしては前半イヴのシンデレラストーリー→後半策略明かしとなるから、物語が直線的に進んでない点でこれまでのハリウッド映画とは違う。しかもラストでイヴは別に演劇で成功するという目標が妨害されてる訳でもないというのがまた不思議。観客は起承転結にカタルシスを感じるわけでもなく、ただただ演劇界の裏側を静観する他ないという印象。

あと主人公カップル40と32には全然見えなかった、、55と47くらいにみえる。美しさで名を馳せた名女優が老女となったところに焦点を当てるのはサンセット大通りに似てるなと思ったら同年の作品だった。過去に縋らないとハリウッドはダメになってきた年代ということか?
丽遥

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