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イヴの総てのkomoのレビュー・感想・評価

イヴの総て(1950年製作の映画)
4.1
女優を志して田舎から出てきたイヴ(アン・バクスター)は、舞台の楽屋口からマーゴ(ベティ・デイヴィス)という大女優に見惚れていた。
そんな熱心な姿がとある劇作家の妻の目に止まり、イヴはマーゴと引き合わせてもらえることとなる。マーゴは殊勝な性格をした田舎娘のイヴを気に入り、住み込み秘書の役目を与えた。
しかしイヴは芸能関係者に取り入る機会を虎視眈々と狙っていた。やがて狡猾な計画で関係者たちやマーゴでさえも踏み台にしたイヴは、女優として栄えある賞を獲得するのだった。


先日レビューした『反撥』は、主人公の内向的な性格が恐ろしい結末を招く物語でした。
しかしこの作品はそれとは対称的に、恐ろしいほど要領の良い女性が業界の秩序を乱してゆく物語です。

ジャケットに"マリリン"と表記されているものの、マリリン・モンローは端役であり、実際にはマーゴとイヴの物語。
そのどちらが真の主人公であるかというのは、未だ映画ファンの間で議論されている模様です。
この作品において共演者同士がしのぎを削る様は、まさに劇中の役者同士の関係性とリンクしていました。

物語の序盤でイヴを少しでも可憐だと思ったなら、そしてマーゴの人間味に少しでも感情移入していたなら、終盤で必ず「うわー!」と叫びたくなってしまうこと請け合いな、不毛な刺激に満ちた物語です。

しかしそれだけで終わらないのが凄いところで、狡猾なイヴでさえも他の誰かに付け入られる可能性があることが示される結末となっていました。
最後にとある人物が自分の姿を鏡に映し出す演出は、恐らく"人間の多面性"を示唆しているのだと思います。
ブワっと一瞬にして、画面いっぱいに広がってゆく虚像たち。
まるで孔雀が羽を広げるような優雅さで、『美しい世界の襞』という現実を突きつけられました。

かと言って本編は暗いばかりではなく、スター同士のウィットに富んだ会話は非常に煌びやかで、爽快な味わいもあります。
白黒の映像の中にくっきりとした光陰を見出せるような作品でした。
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