湯っ子

ナイン・マンスの湯っ子のネタバレレビュー・内容・結末

ナイン・マンス(1976年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

哀愁漂う劇伴も印象的だけど、鑑賞中私の脳内では🎵生きて〜る生きている〜が再生されていた。日曜のけだるい午後、つけっぱなしのテレビから流れる「ザ・ノンフィクション」をなんとなく眺めているうちに釘付けになる、あんな感じがよみがえった。
人物たちが本当に生きて存在しているように感じて、それこそ「ザ・ノンフィクション」を観ている時みたいに、カメラの回っていない時にまで想像を膨らませてしまう。
工場長のこの男、たぶん若い娘が新しくやってくるたびに口説いてんな、その中で引っかかったのがユリくらいだったんだろうな。ユリはクズ男に振り回されているように見えるけど、本当はバカな男の方が御し易いから別れないんじゃないのかな。
ユリの実家はゾウみたいな母系家族。働き盛りのユリは大黒柱でもあり、仕事への意欲もある。
それと同時にユリは男が好きだし子供ができたら産みたい。ふだんの子供の世話はママとおばあちゃん。それはママとおばあちゃんにとっても当たり前のことだし、ユリには子供への愛情もちゃんとある。たぶんユリの家族構成は意図せずこうなったのだろうけど、この形が彼女にとってベストなのであろうし、ひとつの理想形であると個人的に思う。
誠実な優しい男なら、ここに向き合って入り込もうとするだろうけど、男からすると何かしら我慢を強いられるだろうから、きっとうまくいかない。だから、ユリは(下品な言い方だけど)タネだけくれる男を選んでいるし、まともな男はこんなにめんどくさくて自分勝手な女を選ばないんだろう。

ラストの力強さよ。女が尊いとか男がアホだとかじゃない。男がいないと生命は生まれないし。
ただ、女が生命を産み出す営みは尊いよね。
湯っ子

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