スニフ

ミスタームーンライト~1966 ザ・ビートルズ武道館公演 みんなで見た夢~のスニフのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

正直なところ、過剰な期待はしていませんでしたが、想像以上に面白かったです。

「ビートルズ未公開映像」的なものを期待していた方には「がっかり」だったかとも思いますが、本作に出演もされている大村亨氏の著書「ビートルズと日本」のような「あの時代の雰囲気」に興味のある方には十分楽しめる作品だと思います。

有名無名を問わず様々な歴史の証人や研究家たちの言葉が補完しあい、時に矛盾しながら「あの時代」の空気感を醸成していき、ビートルズ来日にまつわる「通説」なども数々の証言、発見によって覆されていきます。

来日当時それほどビートルズに関心のなかった加山雄三氏に「絶対に会って来なさい」と諭したお祖母さんの言葉や、一ファンである新井さんのお父さんが「一目会いたい」という娘を乗せ6月30日に車で羽田空港に向かい、機転の利いた「言い訳」で見事警備を突破し、娘に歴史的瞬間を見せられた先見の明には驚かされます。

また当時、武道館総務部員であった齋藤さんが、上層部が「武道館の神聖性」を盾にビートルズ公演での使用に難色を示す中、「武道館は様々な目的で、色々な人に使ってもらうべきだ」との意見を持っていたことなど、今の社会にも通底する問題のひとつの解答をすでに持たれていたことも驚きであり、日本テレビディレクターの佐藤さんが、朝焼けの首都高を疾走するビートルズを乗せたキャデラックをどう見せるかについて「首都高の立体交差と重ねたかった。あそこは一面焼け野原だったんだから。」の何気ない一言に戦後日本の復興史も重なってくる感があります。
これは単なるノスタルジーではなく、ビートルズ来日公演を軸としたあの時の日本の空気感を残す映像遺産といえる作品だと思います。

じっくり一人一人の証言の内容を「ちょっと今のとこ巻き戻して!」という感じで聞き直したい、是非DVD/ブルーレイで発売していただきたいです。

権利の関係等とは思いますが、キーとなる楽曲までかからないというのはさすがに残念なのでひとつ減点で星4つ!
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