Few

おばあちゃんの家 デジタル・リマスター版のFewのレビュー・感想・評価

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私がおばあちゃんの元から離れて遠くで暮らすことになった時、おばあちゃんは施設の病床に寝たきりだった。
抱きしめてお別れしたいと思ったけど、覆い被さるとびっくりするかと思って、いつも通り手だけ握ったり頭を撫でたりして別れた。
おばあちゃんが「私遠くでしばらく暮らすけど、おばあちゃんも達者でいてね」っていったことがどこまで理解できていたのか、いまだにわからない。
けれど少年がはじめ、おばあちゃんに何も言わずにバスに乗ってしまい、おばあちゃんはその背中を追いかけていくシーンを見たとき、
私のおばあちゃんも、最後、私が部屋から出て行くときにこんな風な眼差しで私のことを見ていたらどうしようと思った。おばあちゃんは何を思ってたんだろう。
わからない。耳が聴こえないのは誰にも当てはまること。
おばあちゃんのことを抱きしめるどころか、おばあちゃんは亡くなってしまったのでもう確かめようもない。
けどそのことを思い出した。

別にすごく面白い映画というわけでも、
描写が、テンポが秀逸、景色が綺麗というわけでもないけど、人が懐を開いていく過程って案外こんなもんかもしれない。
観客の人生にリンクする瞬間があるという、それだけでもその映画に存在価値がある。
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