蛇らい

零落の蛇らいのレビュー・感想・評価

零落(2023年製作の映画)
3.0
時折見せる印象的なインサートがかなり効いている。心情を表現したかのような雄弁さと美しさが共存している。ワンカットでいながら、流れるカメラワークで人物に寄っていくショットで起伏を生む。

漫画というアートフォーム、特に日本における漫画家が評価される仕組みについても考えさせられる。映画のようにいわゆる雇われ監督、脚本家という使われ方はほぼ皆無で、持ち込みとこれまでのキャリアだけが次作に繋がり、評価されなければ連載も作家の意に反して打ち切り。

この仕組みの中で、純粋なクリエイティブに対する評価が存在し得るのかという批評的な視点にシンパシーを感じる一方、売れ線に対してここまで卑下しなければいけないのかが理解できなかった。作家の個々のアイデンティティを確立するにはという論点から、間接的には繋がっているとはいえ、漫画業界全体の現状への責任転嫁のような印象すら受ける。

一切皮肉がなく、物語がカウンターの役割を果たすこともない。主人公は絶望を作品に昇華する力がないだけではと考えてしまう。
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