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スタッツ:人生を好転させるツールの要のレビュー・感想・評価

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これは本当に良かった。
俳優ジョナ・ヒルと、彼のセラピストであるフィル・スタッツとの対話を撮影したドキュメンタリー。彼らの個人的な経験も交えながら、精神科医であるフィルが「ツール」と呼ぶ独自のセラピー手法を解説していきます。
映像作品としても二人の間に流れる信頼関係や愛情、個々の人間性が見えて癒やされたのだけど、何よりこの「ツール」が役に立つ!あまりに金言が多いので、理解できるまで一部分を何度も見たりA6のメモ帳8ページにわたりみっちりメモを取りながら見てしまいました。これができるのが動画視聴のいいところ。

最初は、メンタルヘルスにはまず身体の健康が大事だみたいなよくある話から始まって(根本的にそれができてないから病んでる人が多いのは事実なんでしょうが)あんまり期待感なかったのですが、三分の一くらいのところで構成上の大きな転換点があり、それ以降最後まですごくいい空気でした。

パーキンソン病を患っているフィルの書く、少し震えた文字とシンプルな図が映像に使われているのですが、それが作品全体に温かな血を通わせています。

ツールの実践内容は「次の真珠に糸を通す」「アクティブ・ラブ」「感謝のフロー」など今すぐに取り入れられる考え方ばかり。
特に最後の「喪失のプロセス」が印象に残りました。喪失の悲しみや不安に対処するために、"所有の手段としての肉体の消滅"を観想する……ゆるゆるの棒人間イラストでとんでも深いこと言ってるよこの人

これまで私が見聞きしたことのある心理学の話や、スピリチュアルな分野で言われているのと同じことが、コンパクトに、且つ実際的な、誰でもできるワークとなっていたので驚きました。そしてどこの誰に聞いたことよりも納得できました。(断片が統合された感じ、と言うべきか)

〈痛み・不確実性・継続的努力〉
この3つの現実からは誰も逃れられない。人生とは、それらを受け入れ前進すること。

途中、仏陀の置物が映りました。
かつて仏陀も、愛別離苦、求不得苦などといって、生きている限り苦しみは避けられないということを解きました。
仏陀は自著を残していないけれども、その精神論に共感し救われた他者の手により後世に残りました。ジョナ・ヒルも、自分が救われたツールを他の人にも知ってほしいとの思いからこの映画を制作したそうです。なるほど現代の経典の媒体はネットフリックスかぁ〜…という妙な感慨に包まれました。
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