ぶみ

マッチングのぶみのレビュー・感想・評価

マッチング(2024年製作の映画)
3.0
ラスト1秒、あなたの愛が反転する。

内田英治監督、原作、共同脚本、土屋太鳳主演によるスリラー。
マッチングアプリを始めたことから、様々な事件に巻き込まれていく主人公の姿を描く。
主人公となるウェディングプランナー・唯島輪花を土屋、輪花とマッチングした謎の男・吐夢を佐久間大介、マッチングアプリのプログラマー・影山を金子ノブアキ、輪花の父親を杉本哲太、輪花の同僚を片山萌美が演じているほか、真飛聖、後藤剛範、円井わん、片岡礼子、斉藤由貴等が登場。
物語は、恋愛に奥手なウェディングプランナーである輪花がマッチングアプリで出会った吐夢からストーカー被害を受ける様と、アプリ婚をした新婚夫婦を狙った猟奇連続殺人事件が同時並行して描かれていくため、輪花の周辺で巻き起こるこれら一連の事件がどのように絡み合っていくのかが本作品の最大のポイントとなっており、ラストに向けての目眩く展開は、確かに一見の価値あり。
ただ、今や婚活では主流となっているマッチングアプリという現代ならではのテーマを扱っているものの、あからさまな伏線が張られていたり、相変わらず全てを台詞で説明してくれたりと、前時代的な演出が散見されたのは、気になったところ。
特にこれはもはや邦画サスペンスあるあるとも言えるものであり、不穏な空気感を出すためなのだろうが、やたら主人公たちが暮らすリビングが暗いのはいかがなものだろうか。
本作品でも、何度となく親子二人で暮らす唯島家のリビングが登場するのだが、非情に暗い反面、二人の座る位置を中心に、暖色系の電球っぽい光が当たっていたため、実際にこんなスポット的な照明があるリビングなんて見たことがなく、リアリティが薄れてしまうのは非常に残念に感じた次第。
加えて、これもまた邦画あるあるな点として、告別式のシーンで往々にして雨が降り、それがまた明らかに周囲は晴れていて、そこだけ降らせている感が見え見えなのはゲンナリ。
ただ、監督の前作である『サイレントラブ』の内容が上澄み液かのような希薄さであったことからハードルを下げてしまっていたせいか、脚本の面白さがそれなりに担保されていたのは良かったところである反面、殺人現場がやたらリアルで、思わず目を背けたくなるような描写が登場していたのも『サイレントラブ』同様であったため、苦手な人は注意が必要。
クルマ好きの視点からすると、影山が乗るクルマが、かなり古めで、かつ茶色と橙色の間を行くような渋い色目のボルボ・240シリーズのセダンだったのはナイスチョイスだなと感じたのに対し、ナンバープレートの番号が3桁であるのにもかかわらず、途中にハイフンが挿入されていたのはあり得ない様式であるため、これまたゲンナリポイント。
『サイレントラブ』同様、キャストは皆安定した演技を見せており、それなりに手の込んだ脚本であるため、邦画のスリラーとしては及第点である一方、あまりにもステレオタイプなキャラクターや、前述のような前時代的な演出は、もっとアップデートしてもらいたいものであるとともに、妙にリアルな殺人現場等の小手先の映像表現とのアンバランスさが気になってしまったため、そんなことに頼ることなく観客を震え上がらせるような作品を期待したい一作。

家族は再現できないんで。
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