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離ればなれになってものumisodachiのレビュー・感想・評価

離ればなれになっても(2020年製作の映画)
4.5



1982年ローマ。衝撃的な出会い方をしたパオロとジュリオとリッカルドの3人の少年は、賑やかで楽しい日々を送っていた。やがてパオロは美しい少女ジェンマと恋に落ち、4人は輝くような夏を過ごす。しかし病に伏していた母が亡くなったため、ジェンマはナポリの親戚の家に行くことになってしまい……。

4人の若者たちの40年にわたる人生を描いた作品。イタリア映画っぽーい!!

まず、貧しい生まれという部分は共通しながらも4人の環境がまちまちなのが効いている。ジュリオは犯罪に片足突っ込んだ商売をしているDVの父親に搾取されて育ち、リッカルドはコミュニストでヒッピーのように暮らす両親の元でのびのびと育ち、パオロは母一人子一人という慎ましい過程で育ち、ジェンマは母の死後親戚に虐げられて投げやりな生活に身を投じる。このあたりが丁寧に描かれているので、その後のそれぞれの成長の仕方にも説得力が生まれていた。

ハングリー精神と正義感を糧に弁護士になるジュリオ、俳優を目指して「何とかなるさ」精神でテキトーに生きるリッカルド、高校教師の定職を得るために貧乏に耐えながらコツコツと努力するパオロ、男に依存して搾取されながら生きるしかなジェンマ。少年時代の4人の姿が瑞々しく輝いていたからこそ、その後の彼らの人生のアップダウンが際立つ。

最初は一人だけ成功し順風満帆に見えるジュリオも、あっという間に素敵なパートナーを見つけて子どもにも恵まれるリッカルドも、もちろんそううまくばかりはいかない。逆に、まったく努力が報われず仕事もプライベートも散々に見えたパウロも、フラフラと不誠実にだらしなく生きているように見えたジェンマも、悪いことばかりではない。40年という年月を振り返ってみれば、全員が同じようにプラスもマイナスも味わって必死で生きていたことには変わりがないのだ。

私は、イタリア映画について人物造形にかけては他の追随を許さないと思っている。本作でもそれは同じ。全員がとても魅力的であり、全員が欠点だらけだ(敢えていえばパオロだけは欠点らしい欠点がないのだが、それが彼の最大の欠点でもある)。他人を裏切ったり、他人を失望させたり、倫理的に完全にアウトな行動を取ってみたり。

「自分なら絶対に許さない」と思う人もいそうだが、それでも許されてしまうのがイタリア映画。だってさ、人生で失敗しない人なんていないもの。一生許さないのも自由だけれど、本作のようになんとなく月日が解決しちゃったっていう展開も私はすんなりと受け入れられてしまった(まあ、リッカルドだけああ上手くはいかない気がするけど笑)。

20代以降を同じキャストが演じているにも関わらず、時間経過に違和感がなかったのはメイクと演技力のパワーだろうか。さすがにジュリオ役のピエルフランチェスコ・ファビーノは老けすぎだと思ったが、最後に作中でそのことをイジられていて笑った。イタリア人でもそう思うのね。とはいえ、ファビーノと同じ年のパオロ役キム・ロッシ・スチュアートはまったく違和感なかったけど(20代に見えたよ。怖い)。

冒頭の衝撃的な展開から弾けるような少年時代へとエネルギーいっぱいに突き進み、その後も音楽と画面の切り替えのうまさでダレることなく推し進めていくので、まるで自分も一緒に40年間を生きたような感覚に陥ったのには驚いた。そして、自分の人生でもそうであるように、いくつかの瞬間が特に鮮明に胸に刻まれている。女性の描き方にバリエーションが感じられなかったのと、最終的に男性の友情の話に落ち着いてしまったのがやや残念ではあったけれど、素敵なヒューマンドラマであることは間違いない。年越しで始まって年越しで終わる構成も良かったね。




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