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離ればなれになってものプライのレビュー・感想・評価

離ればなれになっても(2020年製作の映画)
4.4
3人の男と1人の女性による1982年から2002年に渡る40年間の人生を描いた愛と友情の物語。

年代と環境ごとに求めたい愛の変遷および友情の存在意義というベタで普遍的な物語を、長回しカメラによる登場人物の躍動感と音楽によるライド感とその場に居る登場人物が話すナレーションによるスピード感で魅了し、登場人物たちの40年間に渡る人生を1つに繋げて観客を夢中にさせる秀作。

ストーリーに関しては愛の変遷を40年間の月日で辿らせ、年代や環境で求める愛の形が変わることを普遍的に描いている。学生時代の恋愛は相手に生活力を求めないため、好きという感情が直線で交わって付き合う。社会人になると結婚が視野に入り、安定を考慮して相手に生活力を求める。その結果、学生時代とは異なるタイプを好む。この傾向は女性に多いと思ってる。また、恋人または夫婦の関係において、収入が安定しない者は相手から切られる立場にならざるを得ない。結婚生活となると一緒に暮らして互いの生活に干渉するため、自分に理解を示してくれないと長続きしない。その結果、価値観の不一致があったり、理解して欲しいと言いながらも価値観の強要になったりする。価値観の押し付けは男性に多い傾向に多い。そんな流れで本作は年代や環境で求める愛の違いを普遍的に描いている。最終的に、どの形を求めれば良いのか一応アンサーにはなっている。そのアンサーはベタで夢物語かもしれないが、本作は40年間の月日で同じ人間の愛の変遷を辿らせた以上、かなりの説得力はある。結婚前または結婚後でパートナーに不満がある方は本作を観て立ち返ってみましょう…と結論づけたいけど止めておく。おそらく、お国柄的に日本では通用しなさそう。本作の舞台であるイタリアだからこそ通用したのかも。

本作は愛だけでなく友情の物語でもあり、友情の存在意義を再確認することが出来る。恋愛は終わりを迎えたら基本的に修復できないけど、友情は何年の時を経ても変わらなかったり再構築したりで心の拠り所として残し続けることが出来ると実感する。

演出が剛腕。登場人物たちを長回しのカメラワークで追従し、そこから生まれる喜怒哀楽の躍動感。(生々しい濡れ場もあることから城定秀夫監督作を思わせる。)時に激しく時に優しく音楽を挿入し、観客と登場人物のテンションを同一化させるライド感。シーン内に居る登場人物たちが次々とその場でナレーションで話をまとめることでスムーズにドラマを導くスピード感。ストーリーは結構ベタなのに、長回しカメラによる登場人物たちの躍動感、音楽によるライド感、その場で話をまとめるナレーションのスピード感が登場人物たちの40年間を約130分の尺で1つに繋げて魅了させる。

気になった点は俳優陣の若作り。40代または50代の俳優が20代〜30代を演じていたが、年齢相応の顔になってない。4人の主役のうちミカエラ・ラマゾッティだけが唯一、馴染んでいた。とはいえ、本作は演出が剛腕だから一瞬、気になっても忘れて物語にライドするから問題は余りない。そもそもシーン内に居る俳優陣のナレーションが全て過去形であり、物語全てが過去の再現となる以上、ツッコミを入れることは野暮。


⭐評価
脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐
演出・映像   :⭐⭐⭐⭐⭐
登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐
設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐
星の総数    :計17個
プライ

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