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エルマーのぼうけんのRenのレビュー・感想・評価

エルマーのぼうけん(2022年製作の映画)
2.5
幼い頃に父親が何度も読み聞かせてくれた本が『エルマーのぼうけん』『エルマーとりゅう』『エルマーと16ぴきのりゅう』だったため、思いっきり色眼鏡をかけて鑑賞。原作とは設定から異なるのでほぼ別物のような感覚で観た。

不思議な島でのロードムービーかつ行きて帰し物語という子ども向け作品では100万回使われてきた枠組みなのでお話としての新鮮さは無い。でも絵本がそのまま動き出したような(原作の挿絵とはタッチが全く異なるけど)特徴的なアニメーション表現は目に優しく楽しめた。

エルマーの家がお店を開こうとしているが難航している点、りゅう(ボリス)を救うためのロードムービーではなくりゅうと共にある目標へ向かって旅するロードムービーとなっている点など改変が多く見られる。ただそのどれもが時代性を反映させた改変ではなく、元々子ども向け作品だったのもが別ベクトルを向いた子ども向け作品になるための改変で、だとしたら原作完コピでよかったのではないかなと思ったり。

今作を貫く重要なメッセージはおそらく「エゴからの脱却」という至極シンプルなもの。求人採用の電話のために母親がエルマーの貯金を使ったり、ストリートチルドレンがチップを奪い合う(ピクサーの短編映画『ワンマンバンド』を思い出した)序盤がそれを象徴している。共に生きる人がいる以上、その人のことを見て、思いやることの大切さを説く、とても真っ当な児童文学。

不満点は、原作の印象的なシーンが悉くカットされていることに尽きる。辛うじてトラにガムはあげていたけど、ライオンのたてがみのブラッシングもサイのツノを歯磨き粉で磨いてもいないし、何よりワニのしっぽにペロペロキャンディくっつけてそれを舐めにきた別のワニのしっぽにまたくっつけて大勢のワニで橋を作るエピソードが無い。エルマーといえばそこじゃん。減点!

総じて、小さな子どもが絵本の読み聞かせの次に触れるファミリー映画としては決して悪くないと思った。ただ60年近く昔の作品の名を冠して結局現代的アレンジ無しに改変するくらいなら、原作からそのまま飛び出したキャラクター達がカートゥーンサルーンのタッチで動き回る冒険活劇が観たかったかな....。
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