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クリード 過去の逆襲のTajiのレビュー・感想・評価

クリード 過去の逆襲(2023年製作の映画)
3.3

※ネタバレはしていませんが、念のため鑑賞後お読みいただくことを推奨します。


嫌な予感はしていたが、スタローン/ロッキーの不在がデカすぎる。
そもそも不在であること自体なんの説明もなく、空気に近い。

「クリード」ユニバースの拡張のために、いつまでロッキーの後を引く物語をするわけにもいかないのはわかるし、本作でアドニスの物語に集中したのも妥当な語り口だと思う。

けど、まるでロッキーなどいなかったかのような扱いはあまりにもお粗末だし、不誠実さすら感じる。
アドニスに集中したい映画なはずなのに、これではアドニスがただの恩知らずのキャラクターに見えてしまう。

“鏡”のシーンとかは「どの口が言ってんだよ」と思ってしまうし、終盤の劇伴だって「これお前の曲じゃねえからな」と思ってしまう。

本作の製作裏で、スタローンはあまり気持ち良くない形で本シリーズから離脱をしている。
そこも踏まえると、ただただ不信感しかない。

ロッキーがいないことに物語上の説得力が一切なく、ただのオトナの事情でしかないのだ。

「エイドリアン不在でも節々に愛を感じた“ロッキー・ザ・ファイナル”とは雲泥の差」というようなレビューを見かけたが、まさにその通りである。

「クリード」シリーズにおけるロッキーの存在をどう捉えていたかが本作を楽しむ上で大きな分かれ道かと思う。
「ロッキー」というキャラクターがとにかく大好きな自分の感想は前述の通り。

ファイトシーンは相当気合入れて作ったと前々から言われていたし、たしかにカメラワークと演出もこれまでとは全然違う。
でもごめんMBJ、前2つの方が好きだわ。

グリーンバックで撮影した感満載だし、最後のファイトシーンも余計な演出としか思えない。
何より“ボクシング”というスポーツの観客として楽しめる余地がかなり減った。
あくまで映画的な、頭でっかちな演出に感じてしまった。

トラウマを具現化したジョナサン・メジャーズの演技はまじでめちゃくちゃ良かった。
彼はほんと役を手懐けるのがウマイ。

前2作共にオールタイムベスト級に好きなの映画だっただけに、本当に本当に残念。
その辺の映画でこの感じならスルーできますが、大好きな「クリード」ではちょっと無理。
いや大好き“だった”か……。

からの、最後のアニメはもう観ていて気飛びそうになりました。

自分はもう「クリード」の客ではないかもしれないと感じさせられた2時間。

マイケル・B・ジョーダンは好きだし才能ある人だと思うけど、今回は非常に残念な体験となりました。

050
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