明石です

忌怪島/きかいじまの明石ですのレビュー・感想・評価

忌怪島/きかいじま(2023年製作の映画)
4.7
「人と関わらなくていい世界」をサイバー上に作るため離島にやってきた若いイケメン科学者が、科学では理解しきれない怪奇現象に巻き込まれる。こういうサイバーホラー系の映画はそれだけで物珍しく、撮影の仕方含め、新機軸という感じでとても良い。

ただ一点、主人公の設定やらセリフやらが、理系じゃない人が考えた理系の人って感じでちょっと、、「まあでも死体はカルシウムですからね」という台詞か、挨拶を無視してパソコンにだけ向かってるとか。一般に天才というものは、類を見ない知的能力と引き換えに情緒面の成長を引き換えにしていることが少なくないと思うのだけど、これは少しステレオタイプ化し過ぎかなと思った。「現実にいない人間(=作り手の頭の中以外には存在しない人間)」を描いてしまった時点で、映画は、ある程度の負けが確定してしまうと私は思ってる。

ただそれを「君さ、人、あんま好きじゃないんだね」という、一般女性役の山本美月が程よく間の抜けた(しかし本質的な)台詞で中和してて最高に良い。もはや、この人が出てるから見れる、というくらいまでB級ホラーに欠かせない女優さんになってきてる私の中で。

あとシンプルに海と山の景色が綺麗で、ところどころストーリーとは無関係な空撮を挟みつつ「離島」という設定を生かしてるのがとても好き。良い悪いではなく、単純に好き。前作『犬鳴き村』のシリーズでもそうでしたが、清水崇監督は、ホラー作家としてネタ切れなのかそもそも種無しなのかわからないけど、こういう(おそらくは潤沢な予算から)新たな試みのしつづけてるのは偉いなと思う。ただやっぱり幽霊だけはワンパターンなのよね、、ホラー専の映画作家なのに!

こういう離島系の作品は、そもそもこのジャンルの時点で私の性癖にグイグイ刺さってるのかもしれない。限定された規模のコミュニティならではの「村八分」も性癖にくる(青壁の話はもういいか)。何はともあれ、冒頭からラストまで色々と工夫が凝らされていて普通に良い作品だと思う。「呪怨の(と、いつまでも呼ばれつづける)清水監督」の中では相当にアタリだと思う。
明石です

明石です