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眩暈 VERTIGOのkのネタバレレビュー・内容・結末

眩暈 VERTIGO(2022年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

引き込まれる箇所と、演出がアレで観るのが心底つらいと感じる箇所が混在していてなかなか評し難い映画。
911の追悼碑に違和感を覚える吉増氏の語りは非常に重要に感じた。

複数人で詩を朗読したり、吉増氏の朗読に別の人の声を重ねる場面は聞くに耐えなかった。無駄にあちこちから声がして、どの声も音が大きすぎる。おそらくバラバラに録音した声を人為的に繋ぎ合わせているため、互いの声が呼応しないままですれ違う。
女性のナレーション的な読み上げる声にも大きな違和感を覚えた。
その反面、現地の人がメカスの文章を街中で読み上げる箇所は生っぽくてとても良かった。

終演後に行われたいとうせいこう氏と吉増氏の朗読セッションのような形で映画本編にも詩の声を組み込めなかったのか。非常に惜しい。映画本編の朗読で苛立っていた心が、いとう氏の音楽的感覚に触れて「そうそう!」と満たされ、癒された。吉増氏の朗読を生で聴いたのはかなり久々だったが衰えない声の打ちつけるような鋭さ。あれこそが熱い呼応だった。

(世界各国で80もの映画賞を受けたということでなかなか言いづらいのだが)映像や音楽への感性がこの監督とは合わないようだ。集中できたところで異質な要素が入り込むので、鑑賞のリズムが途切れる。

他の人も書いているが、テレビドキュメンタリー的な説明の要素と、吉増やメカスに影響されたと思しき中途半端なアートフィルム的演出が混在しており、そのトーンの揃わなさ、未整理さに始終ストレスを覚えた。

極め付けは佐野元春の意味がまったくない(なぜかインストゥルメンタル。声がテーマの映画なのにここには声が不在)主題歌のMV上映。吉増やメカスは理解できる。
しかし、今世界のどこで佐野元春の音楽が評価されてるというのか。。(しかも音がペラペラのインストである)
佐野元春も含め、人選が吉増氏と親交のある人間関係で閉じてしまっている印象が強く、ここにいとう氏のような異質な文学者を登場させれば、もっと魅力的になりえたと思う。
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