river

劇場版 センキョナンデスのriverのレビュー・感想・評価

劇場版 センキョナンデス(2023年製作の映画)
4.1
「センキョナンデス」は、プチ鹿島・ダースレイダーのYouTubeチャンネル「ヒルカラナンデス」から生まれた映画だ。僕はこの番組が好きで、2人が「なぜ君は総理大臣になれないのか」を話題にしていた頃から、今回映画になるまでの流れを追っている。最初は、ただ映画の感想を喋っていた2人が、大島新や小川淳也と関わるようになり、各地での選挙漫遊を経て、ついには映画化に至る。(クローズドな空間からオープンワールドへ世界が広がる過程がスリリングだった)

ヒルカラナンデスは2人の軽妙な時事ネタトークに魅力があるのだけど、映画ではプチ鹿島の極上の質問力(ロック風に妙技と言いたい)が目立つ。大島新は彼らを日本のマイケル・ムーアに例えたが、ムーアのようにラディカルな手法で切り込むのではなく、当たり前の質問を(空気を読まず)繰り返すことにより、日本のメディアの問題点を現代アートのように浮かび上がらせる。そして、膨大な素材から抄訳にならない構成案を出し、サウンドまでプロデュースしたダースレイダーの手腕も見事。陽気なサウンドが2人の空気感にピッタリで印象に残る。

後半で大きくトーンが変わり戸惑うところもあるが、現実のロードムービーとして捉えれば、予測不能な時代の空気感を記録した貴重なアーカイブとなる。異様な空気の中、彼らは批評や批判を封じ込めようとする声に「そんなのは民主主義じゃない」とつぶやく。普段は軽妙なトークに隠されているが、ふと垣間見える本音が、彼らの民主主義に対するスタンスと希求を覗かせる。

また、今作では男性と女性の候補者を比較することで、ジェンダー問題にも焦点があたり、今後の新たな展開にも期待が持てる。日本の問題点をスタンダップコメディのように面白おかしく表現するなんて、誰にもできることじゃないと思うし、業界にファンが多いのも納得できる。今後の彼らの活動や次回作を心から楽しみにしている。
river

river