Moomin

二十歳の息子のMoominのレビュー・感想・評価

二十歳の息子(2022年製作の映画)
4.8
言葉を見つけるのが難しい

中高生でゲイという自覚を持ったという網谷が大人になり、里親として一人の父になろうとする その息子となるのは拘置所出の少年、渉という

大学時代の講師の最新ドキュメンタリー作品

網谷と渉、二人の生きる姿を見て 観客は何を見つめるのだろうか

なぜこの映画が劇映画のような惹かれ方をするのか
それは登場人物が一言でまとめられないほど魅力的であるからだろう
というより何かにもがく人間が魅力的で
それぞれの抱く問いであったり悩みには的確な答えがある訳ではない中、スクリーン上ではそれでも日々生きているのを感じる
だからこの映画の無言の時間はとても好きである
小さい部屋に鳴り響く食器の音、いただきますとごちそうさまに咀嚼の音
そんな小さな繋がりが気付けば安心になっていて、ほつれて切れそうになってもあのラストへ向かう
描くにはなんとも短い86分。されど86分

インタビューの使われ方も特徴的
非常に少なくコンパクトである
これが映画の面白さに直結する
映画に置いて行かれないように
ただ選ばれたインタビューのセリフはこの作品の核となる言葉であった
またその核となる観客のクエスチョンに
映画は無理に答えようとしない
それが言葉を借りるならこの作品を象徴する『グレー』であり そんな世界や社会でも個々の信念を持ち、今を生きて、これからも生きていくのだろうと
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