主演トム・ハンクス、製作にはトムの奥さんリタ・ウィルソンがプロデューサーとして一枚噛み、本作のタイトルも冠する主人公・オットーの若かりし頃を演じるのはトムの息子、トルーマン・ハンクス…
まさに「ハンクス一家合作」と呼ぶにふさわしいヒューマンドラマ。
✏️やさしさに包まれたなら
妻を亡くした頑固で変わり者のおじいが、向かいに引っ越してきた若い夫婦との心のふれあいを通じ、徐々に人生の方向が変わり始める…というストーリー。
フレドリック・バックマン作「幸せなひとりぼっち」という小説を原作とした、2015年の同名のスウェーデン映画をハリウッドリメイクしたものが本作。
作品全体のプロットは良くも悪くも「王道」。
途中途中の出来事や事件、またクライマックスまでの展開もおおよそ「想定の範囲内」であるワケだが…
やっぱりこういう物語大好き。わかっていても涙があふれてしまった。
トムの演技が個人的に大好きだ、ということもあるけれど、オットーの向かいに引っ越してきたトミーとマリソル夫妻の心温まるやり取りや思い出が幾重にも積み重なって、私の涙腺ダムを決壊させるに至った。
特にマリソルのキャラクターがとてもよかった。
メキシコからの移民である彼女。
英語のイントネーションはどこかおぼつかない感じだし、興奮するとつい母国語が出てしまう情熱的な人物だけど、あの居住区に住む誰よりも明るく朗らかで、人懐っこい。
まさにメキシコの太陽のような彼女の性格が、オットーの冷たく凝り固まった心をほぐしていく一連のシーンは「ヒューマンドラマ然」としていて大変よろしい。
そんなマリソルだけでなく、居住区に住まう個性豊かな隣人たちや野良猫(?)が、自ら幕を引こうとしていたオットーの人生を前向きな方向へと変えていく。
そして感動が最高潮に達するクライマックス。
※以下は少しネタバレ注意。
オットーが残した数々の”遺産”。
それはお金やクルマなど、そこに形として在るわかりやすいものだけではない。
悪徳不動産会社に地上げに遭いそうになっていたあの居住区を救い取り戻した「住人たちの笑顔」。
どんなお金やモノにも代えがたいこの尊い幸せこそ、オットーが遺していった最大の遺産だろう。
☑️まとめ
トム・ハンクス主演のヒューマンドラマということと、公開翌日の土曜日だったことも手伝ってか、自分が足を運んだ上映回は中年~年配の方が多め。
みんなで同じものを見て笑い、涙する「映画館」という幸せな空間の醍醐味をひさびさに享受できる時間でもあった。
さてここで少し社会派な話をすると、日本の高齢者の孤独死は年々増加傾向にある。
オットーのようにこれといったコミュニケーションの場がなく、孤独を感じ自死を選ぶ方や病気で誰にも気づかれることなく亡くなる方が後を絶たない。
本作を見て、現代日本ではすっかり希薄になった「ご近所づきあい」について今一度考えてみるきっかけにもなった。
自分は今のところ、そして今後もパートナーを作る予定は全くないので、ちょっと老後のことも考えてご近所さんとは仲良くしておこうかな…とかそんなこともちょっぴり思ってしまった。
<作品スコア>
😂笑 い:★★★★☆
😲驚 き:★★★☆☆
🥲感 動:★★★★★
📖物 語:★★★★☆
🏃♂️テンポ:★★★★☆
🎬2023年鑑賞数:33(12)
※カッコ内は劇場鑑賞数