のんじ

オットーという男ののんじのレビュー・感想・評価

オットーという男(2022年製作の映画)
4.3
 人間は愛する者や心の支えの喪失感はこんなにも生きることへの逃避をさせるものなのかと思う。
 
 男はとくにメンタル面において弱い生物であることを痛感した。
 
 生きる目標を失うと自殺を考え、この映画の中でも何回か主人公が試みている。ひとりで生きていくことは苦しい、孤独は時として自由であるが、寂しさも時には感じる。しかし、孤立は寂しさプラス生きがいも奪ってしまう気がする。
 
 将来を思いやると、日本社会でもこのような高齢者は今後増えてゆく予感がする。自己中で無関心な人の多い世の中において、「こんな世の中なんか、もううんざりだ」と考えてしまう気持ちも年齢を重ねてくると共感する。
 
 最愛の妻に先立たれ、人生のピリオドを打とうとする役を演じるトム・ハンクスの演技力は素晴らしいものであり、俳優としても好感度は高い。
 
 最期の場面はオットーの人生において幸せを感じ、また周りの人達も、この男の人生から学び、愛され、そしてなによりも「人生、捨てたもんじゃない」と希望を持つことができたのではないのか。人間は所詮は一人かも知れないが、間に多くの関わり(おせっかいなどの干渉など)を持つことにより人間関係が形成されていくのではと柄にもなく考えさせられた。
 
 この映画を観終わり、生きる希望とは何かのヒントをいただいた気がする。
 

 
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