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オットーという男のこーたのレビュー・感想・評価

オットーという男(2022年製作の映画)
4.1
誰かが、人生の価値は死に際に振り返ったときの想い出で決まる、と言った。まさにこの映画はそれを体現していると思った。
オットーは頑固で町一番の嫌われ者として描かれる。彼の言っているとこは正しく、一切の妥協を許さない。それはルールや秩序を軽んじる人には煙たがられるが、それでも彼の周りには誰かがいる。それは彼が困っている人を見たら、愚痴を言いながらも助けてくれる質だと知っているからだ。
しかしそんなオットーは、死のうとしていた。もう何度も。それは人生最愛のパートナーを失ったからだった。作中では何度も彼女との想い出がフラッシュバックする。彼女以外はどうでもいいと言う彼の言葉がとても強く、とても悲しく響く。

彼の近所にメキシコ系移民家族が引っ越してきたことをきっかけに、終わりかけた人生に繋がりが生まれる。妻の教え子、隣人の親友夫婦との繋がりもあって、オットーはもう一度前を向く決意をする。最期の瞬間は本作の冒頭より、とても穏やかなものだったと想像される。どれだけ偏屈で友達が少なくても、誰かのために行動していればきっと味方はいてくれる。そして人生でたった一人でも、運命と呼べる人と巡り逢え、かけがえのない時間を過ごせたなら、それはきっととても素敵な人生だったと言えるだろう。そう思わせてくれる作品でした。
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