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オットーという男のcinemakinoriのレビュー・感想・評価

オットーという男(2022年製作の映画)
4.5




“結婚前のモノクロの人生に彼女が色をつけてくれた”





【幸せなひとりぼっち】のハリウッドリメイク版で、名優トム•ハンクスが地域の嫌われ者役オットーを好演。
堅物、生真面目、偏屈な役柄を一般的なイメージとは異なるトム•ハンクスが演じる。
それだけで観たくなるし、面白そうってなるから凄い俳優さんだなぁと。


【エール】→【コーダ】のように、元ネタが秀逸な作品をハリウッドがリメイクすると毒気が薄まってしまい、より多くの人々に受け入れやすくなるメリットを先行しがちに見受けられるという個人的な印象により、正直本作も【コーダ】みたいに薄まってしまうのかなぁと、、、期待値半分で鑑賞。

【幸せなひとりぼっち】のオーヴェに比べると、確かにオットーの方が毒気は薄く、偏屈堅物とは言え、いい人感が否めず。
ただ、それがトム•ハンクスという役者フィルターによって好転している点が【オットーという男】のポジティブな薄まり感。


どちらの作品もベースストーリーは同じ。

重要な役どころは隣人の奥さん。

個人的には元ネタのパルヴァネ母さんより、本作のマリソル母さんの方がかなり好き♡
これはもう、役者さんの問題であって、キャラクター自体はどちらも素晴らしくポジティブで賢い異国のお母さんと言った感じ。

とにかくこの隣人の奥様によってこの映画は極上のヒューマンドラマへと彩られていて、彼女の言動のひとつひとつに“生きる”素晴らしさや意味を学ばせて頂ける。

古き良き日本の母さんみたいな、強さと優しさと愛と、そしてお節介さが絶妙にオットーを筆頭に、関わる人々のハートを潤す魔法を放っている。

どうしても主人公のオットーへの感情移入に気持ちを持って行かれがちな本作だが、私的にはこのマリソルママの逞しさや優しさや知的且つ品位ある立ち居振る舞いにとてつもなく心を打たれて涙した。
まるで聖母マリア様みたい。



元ネタ【幸せなひとりぼっち】とは年代が違う事もあって、今回はSNSをアイテムにぶち込んで来た点も、オットーの堅物難癖おじさんとの対比が上手く掛け合わさって、よりグッとくる見せ場を盛り込んでくれているところも好き。




フォード×シボレーのマウントの取り合いも良いよなぁ〜。








“生きている感じがするよ”
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