不在

ルキノ・ヴィスコンティの世界の不在のレビュー・感想・評価

3.6
ヴィスコンティは貴族の出身でありながらマルクス主義に傾倒し、共産党員でもあった。
そんな彼のキャリアは貧しい人々に焦点を当てたネオレアリズモから始まっていくが、晩年は貴族の凋落を描いた作品を多く残している。
彼はバイセクシャルであり、恋人だったヘルムート・ベルガーに芸術に関するありとあらゆる知識を授けたそうだ。
子孫を残し、貴族の名を継ぐことへのプレッシャーもある中で、ヴィスコンティはそういった形式に捉われず、別の形で自分の生きた証を残そうとした。
『家族の肖像』を観ると、そういった彼の苦悩が痛いほど伝わってくる。

高貴な生まれと、貧しい市井の人々。
貴族としての名声と、自身のセクシュアリティ。
貴族の文化と、それらの腐敗。
その狭間で苦悩し、他人を傷つけながらも、彼は芸術家であり続けた。
この作品ではそういったことは一切語られず、むしろ意図的に避けられている。
フィルモグラフィの表層をさらうだけではなく、矛盾に悩む彼の本当の姿を見てみたかった。
不在

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