1954年出版「メグレ警部」中期の一冊を原作に、大胆にアレンジ。随分とキャラクターやエピソードをそぎ落とし、その一方でベティという原作にないキャラクターを登場させ、話の主軸にすえている。
そこからも、事件の解決が物語の主眼では無い事をうかがわせる。
推理物というよりは、花の都に夢を見て破滅していく娘達と子供を失った親の切ない物語。
夢破れた女の子たちも、メグレ警部も、全てがパリの街に染みついた記憶の様な描かれ方をしているのが印象的。
派手さはないし、動きも余りないのだけど、静けさの中に胸を締め付ける様な台詞やシーンが入れ込まれ、時折はジョークも交えるなど、上質な作品に仕上げられている。
『ラストナイト・イン・ソーホー』を思わせる作品だが、パリの方がずっと大人。
流石はパトリス・ルコント監督と言うべきか、出てくる女性を老若関係なく魅力的に映すし、変態さんの宴は映さないのに着替えのシーンは必要以上に官能的に映すなど、エロいなぁ・・・と感心。
特筆すべきはベティを演じたジャド・ラベストがチャーミングな事。監督も「良い女優!」と誉めているのも分かる。
観終わってから思い出したのだが・・・そうだった・・・ジェラール・ドパルデューも息子を亡くしているんだよね。