冷蔵庫とプリンター

フルタイムの冷蔵庫とプリンターのレビュー・感想・評価

フルタイム(2021年製作の映画)
-
厳しい交通ストの中で、二児の育児とフルタイム職と転職活動に奔走するシングルマザーを、急き立てるようなハイテンポで描いた秀作。

個人的に印象深いのは、主人公ジュリー(ロール・カラミー)が高学歴(MBA)で、かなりプライドが高いせいで、郊外の狭小物件に引っ越したり、地元のスーパーで働くという選択肢を頑なに拒んでいるところ。
勿論シングルマザーであっても自己実現する権利はあるのだし、元夫が相当クズなようで同情の余地もあるのだが、パリの5つ星ホテルの清掃チーフ職ですら軽んじているのはいただけない。明らかにケア労働を蔑視している。インテリのこういう傲慢さがストの原因なんじゃないかとも思った。

利用者からすれば「うんざり」どころではない、相次ぐストライキで疲弊するフランス社会の様子も描かれている。
大衆の自発的隷従により大規模なストライキなど数十年に一度しか起きない某国とは大違いだが、果たしてどちらの社会がより幸福なのだろうか。