Asino

イヌとイタリア人、お断り!/犬とイタリア人お断りのAsinoのレビュー・感想・評価

4.3
#MyFFF2024

作者が祖母の話を聞くという体裁&ひとひねりあるクレイアニメの造形で描かれる、20世紀前半に北イタリアからフランスに移住した家族の歴史。

山間部の村で暮らしていたウゲット家の人たちが、貧しさ(と多産!)と度重なる戦争に踏みにじられながら、隣国であるフランスに逃れてどうにか自分達の暮らしを見つけていく過程は、さらりと描かれているけどかなり壮絶。
食うや食わずの暮らし、繰り返し戦争に送り出される男たちと子供たちを抱えて待つ女たち、医療に繋がってないから思いがけない理由であっさり死んでしまう子供たち、アメリカに夢を求めて出ていく隣人たち、さらに彼らを追いたてるファシズムの大波。

ネオレアリズモの時代の名作の数々を思い出させる内容なのだが、時折差し挟まれる、おばあちゃんの話を聞いてる(というかクレイアニメを作ってる)孫の視点(リアルな手!)や、住んでいる家がかぼちゃだったりする造形に救われ、引き込まれて一気に見てしまう。

それにしてもすごいタイトルなわけですが、これ本当に貼り紙してた店があったんだろうな。あんまり直接的には描かれないけど、彼らは厳しい労働だけでなく、偏見や差別にも耐えたのだと思う。

ところでみている間、私はずっと「帰れない山」のことを思い出してた。というかブルーノのことを。
彼が生まれ育ち、ずっとそこにいることを選んだ山は、この映画の家族たちが暮らしていた村にすごく似ているのだと思う。
山間部で厳しい気候と労働に慣れ、フランスやスイスに「出稼ぎ」に行って現金を得てまた村に戻る。その繰り返し。
彼が生まれたときにはもう村にはほとんど人が残っていなかったけれど、その少し前の時代に、ウゲット家みたいにみんな村を出ていったのだ。
「イタリア人労働者は過酷な気候と労働に慣れ、不平を言わない」
そんなフランスの記事が引用されていたけれど、黙って働くしかなかった彼らの状況を思うとすごく辛いし、一方で世界中に「食べるために」移住するしかなかった人たちの大半が(今も)同じ状況に置かれているんだと思うとやるせない。
Asino

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