病で精神が壊れていく父親の介護と友人との不倫に揺れるシングルマザーの日々を淡々と詩的に写し撮った作品。
日々のエピソードの積み重ねで時が刻まれていくので大きな物語は無いが、監督の実体験を元にしているからか、それらに説得力があって飽きさせないし、豊かで何とも言えない余韻が残る。
出演している俳優たちが素晴らしいのは言うまでも無いのだが、神経性の病で視力や認知能力を失っていく父親を演じるパスカル・グレゴリーが素晴らしくて驚愕。
哲学教師として最も大切な見る(読む)事と思考する事が奪われている悲劇の中でも、常に柔らかな品の良さを醸し出しながら、それが痴呆で空っぽに成る瞬間だとか、恋人にすがる瞬間の崩れる感じだとか・・・もう、はぁ...という溜息しか出ない。
パリで暮らす左派インテリ中産階級の家族とは言え、複雑でやっかいそうな家族構成なのに、それをサラッと自然にこなしてしまってるのは、流石はおフランス。徹頭徹尾、お洒落。
それは良いとして、可哀相なのはヒロインの不倫相手の息子。
チラッと出てくるけど、学友のお母さんと親父がデキて、自分たちを捨てて友達と同じ街で家族のように暮らしているんだぜ・・・お洒落だろうが個人主義だろうが激怒するよな。