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それいけ!ゲートボールさくら組のnetfilmsのレビュー・感想・評価

3.0
 年間数百本の映画が撮られる日本では若手俳優及びベテラン俳優でもある程度は出演本数を確保出来る。質の担保ではなく、単なる数の担保ならば柄本佑や宇野祥平の尋常ではない出演本数や、佑の父・柄本明の年間出演本数やバイ・プレイヤーに光明を見出しつつある佐藤浩市の近年の出演本数を確認されたい。大手事務所に所属し、ある程度の知名度を持った役者なら、最低限のオファーはある。然しながら鬼門なのが60~70代を越えたシニア世代で、佐藤浩市や役所広司、中井貴一や水谷豊のような名の通った一流スターならオファーはあるものの、失礼ながらそれ以外の役者には極めてオファーが少ない日本映画の現状は極めて深刻だ。ヨーロッパ映画ならば名うての老獪な役者たちが常に必要になって来るが、令和の青春恋愛映画にはもはや親ですらまったく登場しない映画もあるわけで、爺ちゃん婆ちゃん世代など完全に蚊帳の外だ。北野武の『龍三と七人の子分たち』のような映画もあったが、今作もあえて81歳の藤竜也を主演に据え、石倉三郎や大門正明、森次晃嗣や小倉一郎などの往年の名俳優たちを脇役に据えるのだが、今作が現在の世界線に問う映画かと問われれば、う~んこれでは流石に厳しいと言わざるを得ない。

 映画が映画として躍動していないなどと軽はずみに断罪すべきではないが、正直言って野田孝則の脚本は盛大に滑り倒していて、笑うに笑えない。はっきり申し上げて痛々しい。それならせめて編集だけはと期待するものの、役者たちの熱量に対してこの程度の物語は妙に寒々しい。ラグビーで青春を謳歌した学生時代から60年ほどがたち、悶々とした日々を過ごす76歳の織田桃次郎(藤竜也)の元へ当時の仲間たちが次々にやって来る展開もご都合主義だが、当時のラグビー部マネージャーだった木下サクラ(山口果林)が認知症を患い、高校時代の面子を覚えていないのも何かの冗談ではないか。彼女が運営するデイサービス「桜ハウス」が経営危機にあることも90年代Vシネマ的な安っぽい演出で、銀行から融資を受けるためにゲートボール大会で優勝を目指すという展開も短絡的で戸惑う。そんなことはせずに、真面目にデイサービス運営に励めばこんな事にはなっていないのではないか?ただ闇雲に「チームさくら組」にミッションを負わせるばかりで、ちっとも本質を伴わない。退場者が退場する必然性もこの脚本ではあまり感じられない。認知症の問題も引きこもりの問題も一応取り上げてはいるが、掘り下げ方が浅い。そもそもゲートボール部の野心そのものが盛大なる脱線で、山口果林以上に情緒不安定な本田望結の演技もあるものの、我々は素晴らしい娯楽映画を観に来たのであって、何も好き好んで1900円払って痛々しい学芸会を見たいのではない。せっかく実力のあるベテラン勢を集めたとてこの程度の脚本では記憶にも記録にも残り様がない。
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