ロアー

クリスマス・ツリーのロアーのレビュー・感想・評価

クリスマス・ツリー(1968年製作の映画)
3.8
健康だったわずか10歳の子どもが原爆のせいで白血病に侵されてしまい、残された半年の余命を毎日幸せに過ごせるよう、父親を始めとする大人たちが尽くすという、ミシェル・バタイユの小説を映画化した作品。

私の場合、祖母も祖父も白血病で亡くしていて、祖父の時はまだ幼くて人が死ぬということもよく分かっていませんでしたが、祖母の時は病気が判明してから亡くなるまでずっと一緒に過ごしたので、少しお父さんの気持ちが分かります。子どもではないので祖母はあれが欲しいこれが欲しいとは言いませんでしたが、入院している時は母と一緒に祖母が好きな食べ物や体に良い食べ物を持って毎日会いに行ったり、一時退院の時は祖母と一緒に出掛けたりおしゃべりしながらご飯を食べたりして過ごしました。

映画では残された一日一日を幸せに過ごせるよう、お父さんが息子のためにありとあらゆることをしてあげていたけど、息子の幸せのためというのはもちろんのこと、そうすることがお父さん自身のためにもなるんですよね。

「大切に過ごせば半年は長い」というような台詞がありましたが、やっぱり半年って短いです。どれだけ時間を大切にしようと、なかなか十分な時間を過ごせたとは言えないと思います。もっともっとしてあげたいことがあったし、もっともっと一緒にいたかった。そんなもっともっとの気持ちが尽きることもないと思います。でも、その大切に過ごした半年の想い出は永遠になります。亡くした人を思い出す時、笑顔ばかりが浮かんでくるような、そんな日々が過ごせるように願うばかりです。

男の子の周りがみんな優しい人たちばかりでホントに良かった。私は何だかおじさんが好きでした。
陽気でよくしゃべる調子のいいおっさんなんだけど、病気のことを知った時「こんなひどいことはあるかっ!」って自分の息子のように声を荒らげて悲しみを叫んでて、中々そういう風に悲しみを表に出せず堪えてるお父さんにとって、おじさんの存在は随分心の支えになっていたんじゃないかなって思いました。
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