いろどり

小さなアコーディオン弾きのいろどりのレビュー・感想・評価

小さなアコーディオン弾き(1994年製作の映画)
3.8
カザフスタンの小さな村の戦後の混乱を少年の視点で描く。カザフ人、ロシア人、ユダヤ人、日本人捕虜と、思想も宗教も立場もさまざまな人たちの共存を、ニュートラルに描いているのでとても見やすかった。

カザフ人は温厚なのか殺伐とした雰囲気はなく温かくて優しい雰囲気だった。そして少年は基本、のぞきをしてる😂これは監督の少年時代の投影とのことなので、観察が好きだったのでしょう。かなり粗い映像だけど、砂ぼこり舞うカザフの炭鉱の町の在りし日の思い出としてノスタルジア効果があったと思う。当時のソ連でもチャップリンの「街の灯」は上映されていたのね。

日本人のシベリア抑留が描かれているソ連映画といえば「動くな!死ね!甦れ!」が思い浮かぶ。これは上映後のトークショーでも件の筆頭として紹介されていた。「動くな~」のような狂気はこちらにはなくて安心したけど、やっぱり悲劇は訪れる😢当時のソ連は日本のスパイを警戒していたことがよくわかる。少年の理想を浮かび上がらせるようなラストが切なかった。日本初上陸の映画を観られて嬉しい。もっとこの時代のソ連、中央アジアの映画が日本で観られるようになると良いなと思う。


メモ
今作での日本人捕虜役は、カザフスタンに日本人俳優がいなかったため朝鮮系俳優が演じている。上映後のトークショーでの翻訳された教授の説明によると、ソ連には日本の支配を逃れるため多くの朝鮮人が渡ってきていて、スターリンはその朝鮮人たちを追い出す政策をとっていた(朝鮮人強制移住)。日本人捕虜を朝鮮系俳優が演じることにはこういった背景を二重に重ねている意味もある、とのこと。
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