うりぼう

愛と哀しみのボレロのうりぼうのネタバレレビュー・内容・結末

愛と哀しみのボレロ(1981年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

午前10時の映画祭13

ボレロに合わせた見事なソロダンスに始まり、数十年の時を経て、パリの広場で同じダンサーと若者達の群舞が世界の子供達の為に催される。

フランス、ドイツ、ロシア、アメリカ、大戦に翻弄されながら、必死に生きてきた人達の束の間の安寧をボレロが高らかに讃える。

楽団を指揮するのは、ヒットラーに賞賛されたドイツ人音楽家。出征で辛酸を舐め、息子を空襲で失い、戦後も米国では、ユダヤ人にチケットを買い占められ、観客2人の大ホールで指揮棒を振るう。それでも、彼は今が幸せと、妻との平安な生活がある。

ボレロを踊るダンサー、母はロシアの著名なバレリーナ。父は独の侵攻で戦死、母の厳しい指導で開花し、戦後、西欧での公演の後、ロシアを捨て西側に亡命する。

唱うは米国の人気楽団の指揮者を父に持つグラミー賞歌手。父は出征も軍楽隊の指揮者として、パリの解放を祝い、無事帰還。母は後に事故死、兄は心を病む。

一緒に唱う若者の父は、仏のアルジェリア戦争に従軍し、帰国後、成功した。息子は父に反発し、歌に生きがいを見出す。父は出した本により、自分の出自を知り、認知症となった実母に会いに行く。親子で孫の晴れ姿を鑑賞する。

実母は仏の舞台の楽団員、戦時下、夫と共に収容所に輸送される途中で、息子を助ける為、列車外に捨て子にする。終戦となり、一人帰る母、必死に息子を探し回るが見つけられないまま。

公演の広報を担当する女子アナの彼女、戦後、田舎から婚約者の元へパリに出て来るが、駅に迎えはなく、途方に暮れる。掃除婦等苦労の末、アナの職を掴む。

様々な人々の人生を音楽と踊りが支える。グランドホテル形式で戦前から戦後の個々の人生を語り、チャリティ公演にまとめ上げる。仕掛け人のユニセフ職員は、成功のご褒美にエディットの肩に手を回す。

公演終了後、俯瞰で赤十字の車列が延々と続く。大戦の愛と哀しみは、この公演に結実しても、世界の平和、子供達の幸せは少しも達成されていないと訴えているように思える。
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