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動く馬のTnTのネタバレレビュー・内容・結末

動く馬(1878年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

 「バビロン」のサントラをyoutubeで聴いてはあのラスト思い出して、一度おさらいしようと思って見た。「ノープ」でも出てたしね。ちょっと前まではリュミエールを映画史の始祖としてる感じあったけど最近は今作が選ばれるようだ。にしても去年と今年で同じ映像が言及されるとは不思議だ。「バビロン」のレビューでも書いたが、映画史の見直しがあちこちで起きてるなと実感した。

 今作、「ノープ」で言及されてるように確かに黒人騎手だ。かつての「ラ・シオタ駅への列車到着」のような、ヨーロッパ的で白人の文化を映画の始祖とするよりも、純粋に動きを捉えようとしたことが物事の始まりである方が良いなと思った。これはまさに見直しの一つとして正解だろう。また黒人のいる映画史も新たに鑑みねばならないだろうと思った、いずれはアジア人のいる映画史も。

 ゴダールがあの世に先立ち、撮らず終いの映画の企画にニエプスについてのものがあったとか。ニエプスは写真の始祖だ。ゴダールは映画に留まることなく、イメージ自体に立ち帰ろうとしていた。映画史を終えた彼のイメージ史を是非観てみたかった(「イメージの本」で出し切った感もあるが)。マイブリッジを軽々と遡ってどんなものを撮りたかったのだろうか。

 左端にコマ数が振られているが、16コマだけで馬が延々走り続けられるのだ。また生き物の動きの正確さというか、ほんとにつなぎ目がわからない。映画とは仕組みが違うからだが、考えれば被写体が同ポジでループ可能な映像ってそう撮れるものではないな。

 「バビロン」のラストを振り返る。冒頭のマイブリッジの今作から始まり、長い映画史を終えるのは「仮面/ペルソナ」だった。しかし、その前の映像は「アバター」であり、翼竜みたいなのに跨るシーンである。ここで突然マイブリッジとアバターが結びつくのだ。動物に跨る人物、一方は現実でもう一方はCGでと、上手いな。そう思うと映画は物語よりもモーションという原初的なものに回帰しているのかもしれない。

 こうしてチャゼルによる映画"技術"史は纏まった。思えば目、切る(カット)、顔、グラフィック、2D、3Dと前後の関連はしっかりしてて、「バビロン」はテキトーな切り貼りじゃ無かったな。実を言うとyoutubeでラストシーンちょっと探したのですが、真似して音楽に映像載せてるシネフィル共の映像しかなかった。みんな「バビロン」のあれをチャチャってできると思い込んでるんだろうけど、ただのダイジェストでしかなかったな。というわけでもう一度映画館に行こうかな…。
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