Rick

ゴジラ-1.0のRickのレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
3.2
 2016年にゴジラ(1954)の現代的リメイクとしての「正解」を出されてしまった以上、現代ではなく過去を、それも戦後直後を舞台にしたことは慧眼であった。自衛隊がまだ存在せず、碌な武装も持たない中で、どうゴジラと対峙するのか。これは期待しない方が難しい。「英霊」の怨念や核の恐怖、自然災害、生物、もしくは神そのものとして描かれてきたGODZILLAに対し、70周年という節目の年にどう形を与えるのか。期待半分、不安70%くらいで映画館に足を運んだ。見た直後の感情をいかに形容すればいいのだろう。絶望というよりは、呆然とした。ゴジラを見に来たはずだったのに、そこに広がるはジュラシックパークにジョーズ、男たちの大和にバトルシップ、ダンケルクにトップガン:マーヴェリック、そして神木隆之介。ゴジラの暴れ具合ではなく、神木隆之介の演技によってようやく絶望を理解できる。その虚ろな目、慟哭。オーバーな演出かもしれない。いや、オーバーではあった。でもどこかで見たような展開の釣瓶打ちを前には、それすらいい演技に見えてしまう。
 なぜゴジラという存在を深めない。どうして戦後を描く際に壊れたラジオのように「生きろ」を連発するのか。クリシェをするならばせめてクリシェに則ってくれ。映画を見ている最中は、CG満載の迫力の方に気圧され気にならなかった部分が、後からあとから沸々と湧いてくる。レイティングや観客の対象によるところもあるのかもしれないが、もうちょっと人は死んでいるだろうよ...。その辺にもっと色々転がっているだろうよ...。マイナスにしてはあまりにクリーンすぎるよ。
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