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ゴジラ-1.0のせっのレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
4.5

戦後焼け野原となった東京で少しづつ前へ進もうとしているところに、ゴジラがやってきて全てを破壊していく話。

なんだかんだゴジラって絶望感もありながらどこか愛せる可愛いところもあるんだが、今回のゴジラはどこまでも怖い。ゴジラはいつもように人がいようと踏みつぶし、容赦なく建物を破壊し、パワーが溜まったら吐き出す、とやってることは変わらないんだけど、その後の爆風や建物崩壊もじっくり描くから全てが壊される恐怖がすごい。絶望感がすごかった。

この絶望に立ち向かうのが、ほぼ自警団のような民間なのも納得した。男たちがこの戦いに挑むのは、別に立ち向かわなくても良い所で戦えなかったことを悔やむ戦後の男達の国を守るという行為への自己陶酔に見えた。戦後でぐちゃぐちゃなのに自分たちだけでこれに対処しようと思うことがまず常軌を逸してるし、ゴジラ戦に向けて出航する男達のどこかハイになった様子が私には気味が悪く見えた。

敷島が戦争を終わらせられない理由が、特攻から逃げたのとゴジラと最初の遭遇で何もせずに仲間を見捨てたこと。でも、それは両方何もしなかったことが正解だったのであって(ゴジラあそこで撃っててもどうせやり返されて全滅したと思う)、戦わなくて良いのに戦ってないことを一生悔やみ続けている。この映画で本当に怖いのはゴジラでもなく破壊される街でもなく、国を守ること、戦うこと、立ち向かうことに陶酔する異常な空気。

戦争が終わっても私たちの中には、何故か刷り込まれている戦わねば守らねばという感覚がずっとある。忘れていてもゴジラはまたやってくる。ラストの徐々に近寄ってくるゴジラの足音と叫び声に恐怖する。単純にゴジラに戦うカッコ良い男達を描いただけなのかもしれんけど、それが逆に上手く作用してめっちゃ良い映画に見えた(笑)

最後に、今回可愛いゴジラは1つあって、海中に引きずり込まれるゴジラが一瞬固まって「あっ」みたいになるシーン。周りに浮き輪たくさんついてるのも可愛かった。
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