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ゴジラ-1.0のもぐらのレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
3.0
第二次世界大戦も大日本帝国敗戦濃厚の雰囲気が漂う中、神風特攻隊として零式艦上戦闘機に搭乗した敷島浩一は戦闘機の不調を感じ、大戸島にある守備隊基地にて整備兵に整備を依頼するが、戦闘機に不調な箇所がないと指摘される。
何かを隠す様、整備兵から離れ海岸にて海を見つめる敷島が見たのは海底から浮き上がり死んでいた深海魚だった。
不思議に思いつつ整備兵達の元へ戻ろうとした敷島であったが突如として警報が鳴る。
敷島の前に巨大な恐竜の様な姿をした怪物が姿を現す...

山崎貴監督 ゴジラ生誕70周年記念作品
シン・ゴジラ以来の日本実写ゴジラシリーズ30本目の作品です。

冒頭からゴジラが姿を現し暴れまわる姿に大興奮でした。
今回のゴジラ割とよく動き周り、大暴れするのでとても良かったです。
冒頭の大戸島襲来や海上での木造船との戦い、銀座襲撃、二度目の海上での戦闘など見所満載です。
CGのクオリティも高い為、違和感無くゴジラの暴れっぷりを堪能出来ました。シン・ゴジラの時よりもCGのクオリティが上がっていてレジェンダリー版ゴジラにも引けを取らない位の出来だったと思います。

ゴジラの登場するシーンは大満足だったのですが、人間ドラマに面白味がなく、退屈してしまいました。
今作のテーマは恐らく”反戦”なのは分かるのですが、冗長な物語で山崎貴作品にありがちなオーバーリアクションな演技を見せられ白けてしまいました。
観賞中は「良くも悪くもいつもの山崎貴映画だな」と。
山崎貴映画にゴジラが只添えられているかの様な感覚もありました。
ゴジラ登場シーンをご褒美として、人間ドラマパートは我慢して観るような流れを感じてしまいました。

特攻から逃げてきた敷島が自分の優柔不断さから仲間を、幸せを見いだせたかの様に思えた直後にパートナーをゴジラを奪われる事で戦争とゴジラという呪縛に捕らわれてしまい、刺し違えてでもゴジラを倒すことに執着してしまうが生きることを選択することで呪縛から解き放たれる。
という物語は分かるのですが、それにしても全く面白くないんですよね。
全体的に薄っぺらさを感じてしまいました。

ゴジラが熱戦を吐く際に背鰭が少し飛び出てエネルギーをチャージする様な描写はまるで原発の制御棒の様だなと思ったり、光線が直撃し爆炎が上がったあとのキノコ雲や黒い雨など核の要素も含まれていましたが、意外とあっさりしていて「あれ?被曝はしていないの?大丈夫なの?」とちょっと疑問に思ってしまう点もちらほら。作中にガイガーカウンターが登場していたり、黒い雨を敷島が浴びていたのでちょっと違和感が…もっとこの辺り詰めても良かったんじゃないかなとも思ってしまいました。

ゴジラが登場するシーンは恐らく山崎監督が好きな作品のオマージュが盛り込まれているのかなと感じました。
冒頭の大戸島上陸時にはあからさまに『ジュラシック・パーク』でTレックスが初めて姿を現した際の描写にそっくりでしたし、木造船でゴジラを対処するシーンは『ジョーズ』でサメに対してボンベを咥えさせ爆破させるシーンに似ていました。クライマックスの海神作戦でのロープをゴジラに巻き付けるシーンはスター・ウォーズ 帝国の逆襲のAT-ATとエア・スピーダーの戦いを彷彿とさせましたし。民間の船が集結するシーンはスター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明けのクライマックスシーンに似ていると言えば似ているかな?と思ったり...
銀座襲撃シーンのビル上に居た報道チームがビルの崩壊によって死亡してしまうシーンは1954年版ゴジラの報道チームが襲われるシーンのオマージュでしたね。

典子が生きていたという辺りはご都合展開で「あの惨状で生きているなんておかしいだろ!」と思ったのですが、ラストの典子の首元に見られたゴジラの何かが影響しているという描写はとても良かったです。
核の影響か、それとはまた別のゴジラ由来の被害か分かりませんがゴジラを倒してもゴジラが与えた影響は残っている...というラストは良かったです。
けれど、それだと敷島の戦争は終わらないんですよね。
それに典子だけでなく銀座にいた人々も、敷島ですら影響を受けてしまっている可能性がある。
そういった意味では核のメタファーとしても描いているなと思うと同時に今作はハッピーエンドではなく、哀しい終わり方をする作品だなと思いました。
典子の痣は戦争の傷跡、ゴジラの復活を予期させるシーンは「戦争はいつでもおこりうるものである」事の暗喩なのかなとも思ったりしました。

ああだこうだ書いてきましたがゴジラが暴れまわるシーンは日本実写、アニメ、ハリウッドの作品と比較しても過去1番で迫力があるので是非劇場で観て欲しい作品でした。
個人的には震電の登場も嬉しかったです。
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