正統派な東宝製ゴジラの最新版
7年ぶりの東宝ゴジラ映画。
映画の大枠の構成はゴジラ単独作の構成に則ったタイプである。
いわゆる正統派。
しかし、中身は同じ単独作であるシン・ゴジラとは対照的。
シン・ゴジラは政治家の群像劇だが、本作は民間人である主人公の視点を徹底して描いている。
ストーリーは子供向けになり過ぎずリアリティラインを高く設定されていて良い。設定も面白い。
ドラマパートの演出や台詞は、過去の山崎貴作品と共通した雰囲気を持っており説明的でわざとらしい。
ただ、時代設定が現代ではないのでそういうものとしてみれば多少違和感は緩和される。
本作のCG面は良く出来ていて大袈裟ではなくハリウッドレベルに見える。
時代設定的にほとんどのシーンで合成が使われているが、どれも邦画とは思えないクオリティ。
特に明るいシーンでの水しぶきや破壊シーンが素晴らしい。
大日本帝国の兵器が沢山出てくるのも良い。
おそらく過去作での知見や技術が生かされていると思う。
本作のゴジラは防御性能がエメリッヒ版の次に低く、かなり弱い設定で脳みそも猫くらいしか無さそうなのも可愛い。それでも絶望感を与えるには十分な脅威である。
過去作のオマージュも多い。ギャレゴジ、GMK、初代あたりを特に意識しているのでは。
本作の欠点は、正統派故のテンプレ的な物足りなさと山崎貴監督らしいドラマパートだろう。
とはいえ、ゴジラ映画の中でも大衆的で観やすく、テーマも(ある程度ではあるが)初代を継承している映画であることは間違いない。
監督ならでは強みを最大限に生かした映画だと感じた。
新たなスタンダードとして今後作られる東宝産の怪獣映画にも期待できる。